キャリア・教育

2019.12.18 16:00

幻となった「日本版ケンブリッジ校」 英首相からも賛同を得た計画の全貌とは


しかし、首相から返信が来ることはありませんでした。当時の日本はバブル景気で、将来日本が国際競争で劣勢状態になることなど想像もできない時代。そのためか、結局、政府や自治体、訪問した企業から協力を得ることはできず、およそ6年にわたり進めた計画はついに断念せざるを得なくなったのです。
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当時から日本は出生率が減少し始め、少子高齢化の時代が来ることは明らかでした。それにより、日本が海外に活路を求めるためには厳しいグローバル競争に勝ち抜いていくことが必要になる。そのためにグローバルリーダーの育成は絶対に必要だと信じてやってきたことが、日本では全く認められなかったのです。この悔しさは言葉に表すほどができないほどで、私は大きな喪失感に苛まれました。

もし90年初頭に学校を設立して毎年100人以上の生徒を輩出していたら、今では3000人近いグローバルリーダーが世界中で活躍していたことになり、日本は変わっていたかもしれない。私は今でも、学校の設立を断念したことを時々思い出しては悔やむことがあります。

兵の夢の跡
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長年の夢が破れ、日本の若者をグローバルリーダーに育成することの考えからは遠ざかりました。その後は、妻で会長の田崎ひろみと共にジェイエイシーリクルートメントの経営に専念することにしました。

そして2007年、私が留学する際に苦労して留学費用の資金繰りをしてくれた母が亡くなりました。当時私は海外にいて、妹から母の容態が悪くなったと連絡を受け日本に向かったのですが、最期を看取ることはできませんでした。19歳だった渡英時に、「英国で学んで日本に何かを還元するまでは帰ってくるんじゃない」と言ってくれた目的を果たす前に、母は逝ってしまったのです。

1975年に英国で創業したジェイエイシーリクルートメントは、2007年時点でシンガポール、日本、マレーシア、インドネシア、中国、タイに進出し、グローバル企業として順調に拡大路線を進んでいました。しかしその最中、困難は再びやってきます。2008年に世界経済を震撼させた金融危機のリーマンショックにより、創業以来最大の危機に直面します。

連載:グローバルリーダーの育成法
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文=田崎忠良

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