キャリア・教育

2019.12.18 16:00

幻となった「日本版ケンブリッジ校」 英首相からも賛同を得た計画の全貌とは


バターフィールド学長は、ケンブリッジの名を使うことを認めてくださっただけでなく、最高の教師陣を日本に派遣することも協力してくれることになりました。さらに、ケンブリッジ大学の中にある建築事務所に、日本で設立する学校の設計図の制作も依頼してくれたのです。

英国一の名門校「イートンカレッジ」に倣ったカリキュラム

日本で設立する学校に最高の教育カリキュラムを導入するためのモデルとしたのが、英国一の名門パブリックスクールである「イートンカレッジ(Eaton College)」です。同校は、これまでに20名近い英国の首相を輩出した学校として知られています。

イートンカレッジで協力してくれたのは、学長のエリック・アンダーソン氏。彼が学長を務めていた当時の教え子に、現英国首相のボリス・ジョンソン、元首相のデイビッド・キャメロンも含まれています。日本の文科省に学校の設立を認めてもらうために、綿密な学校の組織構想から教育方針、日本人の生徒に合う教育カリキュラムの作成などで多大な協力をいただきました。

その他、世界のトップクラスの大学を受験するために必要となる、英国政府が実施する検定試験の責任者であるジョン・レッダウェイ氏や当時の英国銀行の元総裁でもあるオブライエン卿にも協力を得ました。

英国での準備が整った頃、この学校設立プロジェクトを進めていることについてサッチャー首相にも知らせたく手紙を送ったところ、「素晴らしいアイデアです。何か私にできることがあればぜひ協力します」と激励の返信をいただきました。


マーガレット・サッチャー元英国首相 Getty Images

学校設立の計画書や設計図などから、日本での学校設立に必要な金額を算出したところ当時の金額でおよそ200億円の資金が必要になり、資金繰りも大きな課題となりました。

英国の教育の権威の協力とサッチャー首相の激励を励みに完璧に準備を整えたことで、プロジェクトを絶対に成功できると確信し日本で学校設立のための活動を開始しました。この時は、断念することになるなど考えてもいませんでした。
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文=田崎忠良

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