経済・社会

2019.12.13 06:30

中国に歩み寄るロシア、2020年夏に「反アップル法」施行へ

Mikhail Svetlov/Getty Images

ロシアにおいて、ロシア製ソフトウェアをプリインストールしていないデバイスの販売を禁止する法案が可決され、「反アップル法」と呼ばれている。この法案は来年7月に施行される予定で、ロシア政府はその目的を「ロシア企業が国内ユーザーにサービスを提供するための法的メカニズムを提供すること」と説明している。

しかし、それを額面どおりに受ける人はほとんどおらず、アップルのデバイスが店頭から消える可能性が指摘されている。

この法案は、スマホやタブレット、PC、スマートTVなどのデバイスメーカーにロシア製ソフトウェアをプリインストールすることを義務づけるものだ。ロシアのメディア「The Bell」は、この法案が巷では「反アップル法」と呼ばれていると報じている。

アップルは、iOS端末にサードパーティー製アプリをプリインストールしたことが過去に一度もなく、強制されればロシア市場から撤退する可能性が指摘されている。法案の作成者らは、ロシアの消費者に選択肢を与えるためだと主張しているが、アップルなど欧米の大手テック企業は、自社の方針を曲げるよりもロシア市場から撤退する道を選ぶ可能性が高い。

なぜならば、ロシアがデバイスに監視ソフトを埋め込むリスクが高まるからだ。ロシア政府が有事の際に国内のインターネットを国外から切り離すことを可能にする「インターネット主権法」を施行したり、「ロシア版ウィキペディア」の作成に着手していることを考えると、十分にあり得ることだ。

The Bellは、一連の法案施行について「長期に及ぶデジタル抑圧だ」と述べている。政府筋の情報によると、この法案は、「クレムリンが主導で策定した法案パッケージの一部」だという。ロシア情報技術・通信省は、製品の選択肢が狭まる可能性があるとして法案に反対したが、クレムリンに押し切られたという。

アップルも、情報技術・通信省と同じ考えをロシア政府に伝え、「法案が施行された場合はロシアでのビジネスモデルを見直す可能性がある」と警告したとされる。これに対し、ロシア政府は中国での規制強化にアップルなど欧米の大手テック企業が対応したことを挙げ、取り合わなかったという。しかし、ロシアは中国ほどの市場規模がなく、アップルにとってロシア市場撤退の影響は限定的だ。
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編集=上田裕資

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