しかし、先日公開されたレポートで、VPNアプリの危険性が指摘された。不正なVPNアプリが個人のアイデンティティや位置情報を収集し、中国などの政府当局とシェアする可能性があるというのだ。
情報サイトTop10VPNのレポート「Global Mobile VPN Report 2019」によると、ここ1年の世界におけるVPNアプリのダウンロード件数は4億8000万件に達し、前年比で54%伸びたという。このタイプのアプリは中国やロシア、イランなどの独裁政権の監視を避けたい市民らの利用が多いとされるが、米国でのダウンロード件数も7500万件近くに達していた。
米国で最も人気のVPNアプリは「VPN – Super Unlimited」と呼ばれるもので、過去12カ月間で800万ダウンロードを記録した。開発元のMobile Jumpはシンガポール企業と名乗っているがTop10VPNの調査によると、実際は中国企業だという。同社のリサーチ主任のSimon Miglianoはこのアプリが収集した個人データを、中国政府に提供する可能性があると警告した。
「中国のVPNアプリが米国で急激にダウンロード数を伸ばしているのは、危惧すべき事態だ。このアプリは個人の位置情報を含む膨大なデータを集めており、それを広告に利用するだけでなく、中国を含む各国の政府当局に提供する可能性がある」とMiglianoは述べた。
「中国政府がインターネット上の言論や人々の行動を監視していることは広く知られている。このアプリを利用中の米国人ユーザーが危険にさらされていることは明らかだ」とMiglianoは続けた。Mobile Jumpは自社に関する情報をほとんど開示しておらず、フォーブスからのコメントの要請にも応じなかった。
このアプリ以外にも、中国企業による数多くのVPNアプリがiOSのアップストアや、グーグルのGoogle Play上で世界のユーザー向けに公開されている。これらのアプリはほぼ全て無料で提供されているが、賢明なインターネット利用者は決して手を出すべきではない。
「当社が世界のトップ30のVPNアプリを調査した結果、60%近くが中国と深いつながりを持つことが確認できた。米国で上位20位圏に入ったアプリのうち、3つ以上が中国企業のもので、X-VPNやTurboVPN、VPN Proxy Masterらがそこに含まれる。また、中国との関連を隠しているアプリも多い」とMiglianoは話した。
筆者としては、無料VPNアプリの利用は控えることをアドバイスする。デバイスやデータの安全性を保ちたいのであれば、然るべき対価を払って、著名なデベロッパーの有料アプリを利用するべきなのだ。