高品質オリーブオイル、認知症の原因物質抑制か

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オリーブオイルの中でも最も品質が高いエキストラヴァージン・オリーブオイル(EVOO)について、脳の健康を改善させ、認知機能の低下リスクを軽減する可能性があることを示す新たな理由が、マウスを使った最新の研究で示唆された。アルツハイマー病などの患者の脳にみられる異常なタンパク質の蓄積を抑制する可能性があるという。

地中海式ダイエットに欠かせないEVOOは、これまでも健康効果に関して高い評価を得てきた。地中海式ダイエットの効能を示したさまざまな研究では、EVOOは血管の弾力性の改善、加齢に伴う記憶力低下の予防に役立つ可能性があるとして、脳や心臓の健康増進効果が見込まれる食材の一つに挙げられている。また、過去の動物実験では、アルツハイマー病の発症リスクを抑える可能性も指摘されていた。

米テンプル大学の研究者らが行った今回の研究はさらに一歩進み、EVOOをたっぷり使った食事には、アルツハイマー病や前頭側頭型認知症の患者の脳にみられる異常なタウタンパク質の蓄積を防ぐ効果があるのかどうかを、マウスを用いた実験で調べた。主に大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮するこのタイプの認知症は、早ければ40歳くらいから発症し、言語障害や記憶力の低下といった症状が表れる。

研究チームは、遺伝子を操作してタウオパチー(脳内でのタオタンパク質の蓄積)を発症させたマウスのグループに、多量のEVOOを加えた餌を与えた。どのマウスも比較的若く、人間では30〜40歳相当。同じ年齢層のもう一方のグループには、EVOO抜きの通常の餌を与えた。

半年後、これらのマウスの評価を行うと、EVOO入りの餌を与えたマウスは通常の餌を与えたマウスと比べて、タウタンパク質の蓄積が60%少なかった。また、前者は学習テストや記憶テストの成績でも後者を上回った。

チームによれば、EVOO入りの餌を与えたマウスの脳組織では特に、シナプスの健康の維持に関わっていると考えられている「コンプレキシン1」と呼ばれるタンパク質の量が多かった。その増加がタウタンパク質の蓄積を減殺する形になっている可能性があるが、正確な関係は不明だという。

論文の責任著者であるテンプル大アルツハイマー病研究所の所長、ドメニコ・プラティコは、報道発表の中で「人間の食事に採り入れられて久しいEVOOには、私たちもまだ完全には理解していない理由から、健康に多くのメリットがある」と言及。その上で「EVOOにはさまざまなタイプの認知症から脳を守る力があると分かれば、EVOOが脳の健康をサポートする仕組みについて理解を深められるようになる」と述べている。
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編集=江戸伸禎

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