これほど大規模な油田の発見は、イランの経済見通しや世界の原油埋蔵量にとって大きな朗報のように聞こえる。事実、ロウハニ大統領は演説の中で、今回の発見をまさにそのように位置づけていた。イランは米国の経済制裁によって原油輸出が大幅に落ち込み、経済が深刻な打撃を受けているが、大統領は発表を機に、それでも制裁に屈しない姿勢を強調したわけだ。
ところがその後、ロウハニ大統領の発表内容は、見かけ倒しに近いものだったことが明らかになった。それは、経済的な苦難が続くなかで国民の支持を集めるために、巧妙に演出されたものだった。
発表から数日後、ビージャンナムダル・ザンギャネ石油相が発見された油田について詳しい説明を行った。それによると、新油田により増えるイランの原油埋蔵量は、実際は220億バレルにとどまるという。それでも確かに相当な量ではあるが、大統領が誇示した530億バレルに比べると、ずいぶんかけ離れた数字だ。
さらに、新油田の原油回収率は10%にとどまるため、実際の採掘量はたった22億バレルほどになる見通しだという。API比重が20余りとかなり重質の油で、ベネズエラ産原油と同じように採掘が難しく、そのコストも高いからだ。イランの現在の状況からすると、この油田から実際に原油が採掘される可能性は低く、市場に出回る可能性はさらに低いと言わざるを得ない。
ロウハニ大統領は巧みな宣伝をし、実際、国際的なメディアの注目を集めた。だが、今回の油田発見によってイランの運命、富が変わることはなさそうだ。