そこで大きな力となり得るのが人工知能(AI)だ。大麻産業ではこれまで、新技術が積極的に導入されてきたわけではない。しかし、投資家が大麻産業へ大金を注ぎ込むにつれて、この状況は間もなく変わるだろう。
では、AIによってどのような影響が生まれるのか? 大麻投資信託会社クロップ・インフラストラクチャー・コーポレーション(CROP Infrastructure Corp.)のマイケル・ヨーク最高経営責任者(CEO)はこう語る。
「センサーや高解像度カメラにAIを採用することで、水分量、phレベル、温度、湿度、栄養分、光量、二酸化炭素(CO2)レベルなど、生育環境における複数の要素を監視・調整できる。こうした要素の監視・調整は、生産者が栽培可能な大麻の質と量を大きく左右する。またAIは収穫の自動化も支援し、現在手作業で費やしている多くの時間を節約できる」
「同様に、自動種まき装置にもAIを採用することで、種まきの効果と効率を高められる。さらにAIは苗の雌雄を判別したり、病気の苗を検知して治療や除去したり、成長率を記録してサイズや収穫量を予測したりできる」
こうした改善が大きな前進につながる可能性があることは間違いない。
さらにAIは、新しい品種の発見や品種改良に重要な役割を果たすだろう。その結果、リラクゼーション、興奮、空腹感の増加・減少など特定の効果をもたらす品種が登場し、大麻市場のさらなる成長につながる可能性もある。
しかし、考慮すべき点もある。米国では現在、全国レベルで統一された法規制がなく、高度なトラッキング(追跡)システムが必要とされる。
大麻投資信託会社ナビス・ホールディングス(Nabis Holdings)のマーク・クリチューク社長は「既存の法規制は複雑で、企業は栽培から梱包、消費者への販売に至るまで事細かな規定に従う必要がある」と指摘する。「些細な違反であっても大きな損失になり得るし、大麻のライセンス剥奪などの厳しい処罰を受ける可能性もある」
小売業に関してはさらに複雑な状況だ。「AIは、大きな影響を生む可能性のある重要な技術進歩のひとつだ」とクリチュークは言う。「この技術の導入により、大麻小売業者は州ごとに異なる規制や頻繁な法改正についていくことが楽になる。この情報により、政府の規制に引っかからないようなより適切なやり方で梱包・輸送・販売ができるようになる」
コンプライアンスの問題は、大麻事業者のビジネスの失敗につながる最も大きな要因となることは肝に銘じておくべきだ。「大麻ビジネスにはコストがかかる。特にライセンスの取得や更新、高い税金、頻繁に変わる法規制への対応といった面でだ」とクリチュークは言う。「自動化され、AIを搭載した技術を法令順守に利用できる大麻事業者が増えれば、成功する企業も増えて、市場の成長に貢献するだろう」
繰り返しになるが、大麻産業におけるAIの導入はまだ初期段階にあり、勢いを得るには時間がかかるだろう。しかし起業家にとっては、大きなチャンスかもしれない。「大麻産業は今後成長するのみであるため、テクノロジー革命が起きるのは時間の問題だ」とクリチュークは語る。