人工知能(AI)と機械学習を応用し、その骨の折れる作業の効率性を高めるのが、コマル・タルワルがインドに設立したTTコンサルタンツとその子会社Xlpat Labsだ。06年、デリーの大学に通う法学部の学生だったコマルは、2歳年上の起業家の姉に憧れて起業を決意。両親に頼み込み、自宅の地下室で米国の法律事務所向けに特許調査を行うTTコンサルタンツをつくった。
最初の半年間は鳴かず飛ばずだったが、オンライン広告が功を奏して仕事が入るように。08年の世界金融危機後は、台湾や日本などアジア企業との取引を増やしてきた。
転機が訪れたのは、12年。顧客から「特許調査でもAIを使って、リサーチャーがかける時間を短縮できないか」と聞かれたのをきっかけに研究開発を開始。自分が調べたい事柄を検索すると、それに関連する世界の特許出願書類や科学論文のトップ10を選び出し、その要約レポートもつくれるヒット商品「Xlpat」が出来上がった。強みは情報の分析力で、特許の相対的な価値やマネタイズの可能性も指標化できる。
現在、世界で1000社以上が同社のサービスを利用しており、日本でも大手メーカーなど100社以上が顧客だ。コマルが掲げるのは「イノベーションの民主化」というビジョン。「地下室で始めた小さな会社がここまで成長できたのは、リスクを恐れず新しいイノベーションを追求してきたから。どんな人でも簡単にアイデアをイノベーションに変換できる仕組みをつくりたい」。
コマル・タルワル◎TT Consultants創業者兼ディレクター。子会社のXlpat Labsの共同創業者。2016年にイスラエル政府による優れたスタートアップへ送られる「スタートテルアビブ」賞を受賞。ビジネスリーダーとして世界経済フォーラムのダボス会議などに出席。