個人用デスクを仕切るパーティションが低いことやオープンスペースをもうけていることは、自由なコミュニケーションを大切にする世代のニーズに応えている。従業員は、仕事の仕方や個人の好みに応じて毎日違う場所に移動し、同じ席を4日以上連続して使ってはならないことになっている。
役員もみなばらばらの席に座っている。それでは不便なこともあるのではないかとわたしは思ったが、人事管理部門のキム・ミジュンは「他の部署の業務への理解が進みました」と話してくれた。
照明や適切な採光は欠かせない。従業員は効率的に仕事を合理化し、定期的に仕事へのフィードバックを受けられるようにしている。
オフィスにはシグネチャカラーの黄色と赤が多く使われている。写真:マクドナルド
一方、休憩スペースには開放感がある。オフィス内の「McCafe」は、マクドナルドの小規模なカフェを思い起こさせる。実店舗と同じようなメニューボードと軽食レストランがある。オフィスの中心に位置し、誰にでも利用しやすいようになっている。
従業員はここで焼きたてのあたたかいイングリッシュマフィンやMcCafeコーヒーをいつでも無料で楽しむことができるし、ちょっとした作業や少人数のミーティングにも使えるようになっている。
ロナルド・マクドナルド・ハウス(訳注:入院中の子どもに付き添う家族のための宿泊施設を運営する慈善団体。日本では『ドナルド・マクドナルド・ハウス』と呼ばれている)へのデジタル寄付箱も設置され、自然な社会貢献をうながしている。
「ミシュラン」ならぬ「マクシュラン」ガイドも
「通常のオフィスよりも、コミュニケーション、多様性、作業効率を最大限にできるスペースを多く取りました」
オフィス移転の責任者で、「オフィス・オブ・マクドナルド・ピープル」アンバサダーのリー・ブンキュは説明してくれた。オフィスサービスチームの相談役であるチョイ・ジュンヨンはこう強調する。「私たちは、従業員のアイディアに即座に対応できる文化を育て、『プロフェッショナリズム』と『合理性』と『楽しさ』を追求したいと考えました」
座席は大きなM型のデザイン。写真:マクドナルド
彼らは新しいオフィスの家具や色を投票で決めることにし、会議室の名前をつけるイベントを開催して、従業員に参加を呼びかけた。個人用のロッカーやクローゼット、授乳室も作ることにした。また、ミシュランを模した「マクシュラン」ガイドも作成した。ブランドマーケティングチームのアシスタントマネジャー、キム・ミョンヒは言う。「このオフィスには愛着があります。積極的な意見集約や調査を行って作り上げた空間だからです」
チョCEOは、移転前、新しいオフィスの目標を「良い瞬間を感じること」としていた。「すべてのお客様にサービス精神を持って接するためには、従業員が『最高の瞬間』を感じながら働けるようにしなくてはいけません」
「顧客志向文化」「共により良く」「責任を持ってリードする」という考え方が、新しいオフィスと調和しようとしているのだとチョは語った。
「これは革命そのものだ!」。映画『ファウンダー』の中で、最初に自動化システム「スピーディ」を導入した店舗で、マクドナルドの創業者レイ・クロックが叫ぶ場面がある。マクドナルドのオフィスはその誕生秘話と同様、まさに「イノベーションそのもの」を目指しているようだ。
社員の座席は「左寄り」のデザイン。写真:マクドナルド