W ventures代表パートナーの東明宏は19年7月、同社に投資を行い、支援している。
東:最初にお会いしたのは、18年11月の「BeautyTech TokyoMeetUp」。私がモデレーター、大庭さんが登壇者という関係でした。その際に、「働いている美容師が幸せにならないと、お客様が幸せになるのは難しい」「美容師ファースト」と大庭さんがおっしゃっていたのを覚えています。僕は以前、モバイルゲーム業界にいて、ゲームクリエイターをリスペクトしていた一方、業界としてまだまだ適切に価値を評価できていないのではという問題意識がありました。美容師というクリエイターの価値を適切に再評価するという世界観にすごく共感しました。
投資をした理由は、大庭さんは連続起業家であり、美容室業界に知見が深く、かつ、インターネット業界の最先端もわかるという稀有な人材。その一方で、フランクで社長っぽくないんですよ(笑)。ビジネス経験が十分で、かつ、美容師というクリエイターとしっかりコミュニケーションが取れるパーソナリティも持っている。そういう起業家がこの業界を変えるのだと思っています。
大庭:現在、20代から60代までの仲間がいますが、現場の人間に信用してもらえることは大事。私たちのシェアサロンは、初期費用1万円、月額2万〜5万円、売り上げの20〜30%の料金で、美容師が施設を使用できます。競合もいますが、私たちが最初にはじめたビジネスモデルのため、様々な点で有利に展開できています。また、「美容師のために」という観点から取り組んでいるため、ウェブマーケティングや集客をはじめ、例えば、ヘッドスパ専門の美容師に月額制を提案し、売り上げを10倍に伸ばした経験もあるなど、美容師が自立するためのあらゆる支援をしています。
東:店舗というハードはわかりやすいですが、「ハード+ソフト」が一番の価値だと思っています。「ソフト」をどう強化するかがすごく大事になる。その点、大庭さんの会社には、取締役美容師が2人います。美容師の感覚や気持ちは美容師が一番わかっているので、組織体制として競争力になると思いますね。
僕は投資家として、「より自分らしくありたい」というライフスタイルの変化が起きる人生100年時代で、ビューティー領域における事業の可能性は大きいと思っています。その中で、フリーランスの美容師仲間とどれだけ影響を与えられるか。また、海外展開できるポテンシャルも高い領域だと思うので、大庭さんには大きな成功を狙ってほしいです。
大庭:僕は前回の起業時に、美容室検索サイトを立ち上げました。ただ結果的に、インターネットメディアをやるだけではこの業界を変えられない、という思いもありました。「一人ひとりの美容師の幸せを一つひとつ作れば、必ず変わる」と覚悟を決めて、時間はかかると思いますが、リアルから変えていきたい。今後は、美容師とお客様というチャネルと資産を用いながら、D2Cやメディアにも展開していくことを視野に入れています。また、海外からの取材や視察もきていてポテンシャルも感じるので将来的にはアジアを中心に海外展開もできたらと思っています。
ひがし・あきひろ◎W ventures代表パートナー。早稲田大学卒業後、セプテーニ・ホールディングスにて子会社取締役、グリーでのプラットフォーム事業の立ち上げ、マネジメントを経て、2012年、グロービス・キャピタル・パートナーズに入社。ベンチャー投資に従事。19 年4 月、Wventures設立。主な投資実績として、エブリー、クリーマ、リノベる、ukkaなど。
おおば・くにひこ◎GO TODAY SHAiRE SALON代表取締役。1976年生まれ。20代で数社を経験しネクスト(現LIFULL)に入社。2007年、同社退社後、当時では珍しい固定費ゼロの完全成果報酬型の美容室検索サイト「美美美コム」をローンチ。掲載店舗数で国内業界2位まで成長させ、14年に楽天にバイアウトした。ITや経営、美容室業界に精通。