男性の不妊は誰にでもありえる。映画「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」が伝える、当たり前じゃない世界

(c) 2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会


男性は女性の大変さを知っておくべき

──映画の中で、精子の運動率の低い結果を見せながら「これはヒキタさんの成績じゃなくて精子の成績なんですよ」とお医者さんが言っていたのが印象的でした。男性の多くはどうしても「自分=精子」という評価になってしまうのですね。

細川:これで子どもができますし、いちおう射精できるから、生き物としてそこは大丈夫だろうって思い込んでいると思います。それをダメだって言われると、男性の多くは例外なく落ち込む。でも、スタッフのひとりが自分の精子の運動率が良かったときに、ずっと機嫌良かったですもん。精子見られるの恥ずかしいとかじゃないんですよ。精子の運動率だというと、喜んで見せてくれていました。

入澤:私もこれを開発するにあたって初めて自分の精子の運動率を見たんです。高熱を出すと精子が死んでしまうなどという都市伝説的な話もあり、子供の頃、熱が40℃超えたことが何回かあって、もしかしたら自分には機能がないんじゃないかって心配でした。20数年過ごして、初めて見るときのドキドキ感とか、結果を見て、大きな不安が無くなったあの安堵感はすごかったですね。視界が拡がるというか、ホッとしますね。


(c) 2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会

──女性との違いはありますか。

入澤:女性は生理がくることで、重いとか、タイミングがずれちゃうとか、不正出血とかあるので、自分の身体のことを気づきやすい。毎月、自分の身体と向き合っていますからね。病院でも婦人科はありますけど、男性科はない。精子の有無や運動率は自覚もできないので、意識が自分の身体の状態へは向きません。

細川:女性は生理って割と毎月大変なことがあるけど、男性にとって射精は快楽でしかないから基本は軽く見てますよね。

入澤:男性って妊活の時、女性と比べるとできることが少ない。精子出すくらいしかできなくて、あとは女性の身体の中でうまくいくかいかないかの話になっちゃう。やっぱり女性と距離はできちゃいますよね。女性の気持ちや行動になかなか寄り添えない。

細川:やっぱり女性は大変だなと思います。いろんな治療とか検査でも直接的にいろんなことを調べられる。一方で、男性は精子の検査しかない。妊活では、女性が時間をかけて何度も何度もやらないといけないことがあるということを、男性はちゃんと知っておいたほうがいいなと思いました。
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写真=井土亜梨沙

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