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「上の世代から『まったく、今の若い子たちは……』と思われるような部分こそが、実は彼らの武器になっていく」。ミシュランの3つ星を世界最短で獲得した名店「HAJIME」のオーナーシェフ・米田肇は、若い世代が前の世代と違っていることをプラスに評価する。思い返せば彼自身、理工学部出身で電子部品メーカー勤務の経験ありという異色の経歴と持ち前の合理主義から、若いころは料理界で“異人種”と見なされていた──。


次代を担う若者にフォーカスする30 UNDER 30 JAPAN。そして、未開拓の領域を切り開いて自ら指針となる者をMark Makerとして選定するモンブラン。この両者が、世界を変えるUNDER 30世代と世界を変えてきたOVER 30世代とを結びつける「#MarkMaker」に、この人ほど相応しい人も、そうはいない。せっかく得たミシュランの星さえ顧みることなく、変化を求めて前へ、前へと進み続けてきたのが、日本を代表するガストロノミーの求道者、米田肇だからだ。

料理の業界に入って、すごく遅れているなぁと思った

「僕たちより前の世代の人たちは、『自分はこれがやりたいんだ!』といって単独で頂上を目指すような人が多かったけれど、今の若い人たちは『周りと一緒に何かしたい』といって、協調性がすごく高い。組織だって中央集権型からブロックチェーンのような分散型に変わりつつある時代だからなのか、人間も同じように変わってきてるなぁと、すごく思うんです」

1972年生まれの米田は、かつて「新人類」と呼ばれていた世代の最後尾に属する。高校時代には数学に熱中し、進学先は理工学部。電子部品メーカーに就職した後、料理の世界に転じたという変わり種だ。

「元々コンピューターのエンジニアをしていたこともあって、普通のサラリーマンの生活もわかっているし、研究所の生活も知っている。だから、料理の業界に入って、『なんでこんな回りくどいことをしているんだろう』とか、『もう少し、こうした方がいいんじゃないか』とか、疑問や提案をけっこうブツけたんですが、返ってくる答えはいつも『感覚だよ、感覚』。すごく遅れているなぁと思いました」

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自らもかつて、上の世代と考え方や行動パターンが合わず、駄目出しをされ続けてきた経験を持つ。それだけに、若い世代を見る米田の眼はクリアで、かつ優しい。

「お爺さん世代は父親世代に対して『おまえらは駄目だ』と言っていたし、父親世代は私たち世代のことを駄目だと言ってきた。でも、上の世代が思いつかないようなことをやって新しい時代を作って、物事を進化させてきたのは若い世代。今の若い世代も、横とうまくつながってひとつのことをやっていけるように、僕たちが持っていないものを持っていて、僕はすごく期待しているんです」

駄目だ駄目だと言われてきた短所が長所にもなる

高校生のころまでは人と話をするのが苦手で、合唱コンクールで毎年、指揮者をかってでたのは、人前で歌うことに抵抗があったため。数学が好きだったのも、会話の必要がなく「自分がきちんとやれば、きちんと正解にたどりつくから」だった。関心がものづくり、そして料理へと向かっていったのは自然な流れで、ガストロノミーの世界で衆知のとおりの大きな成果を挙げているし、一方、今でも「ガンプラが大好きで、ものすごく綺麗に作る」という。

「駄目だ駄目だと言われてきた短所が長所にもなる。自分の欠点やウィークポイントは必ず武器になる要素を秘めているんです。ありのままが一番。引っ込み思案の人は何かに集中して取り組めるかもしれないし、落ち着きがない人は企画をしたり提案をしたりするのが得意かもしれないでしょう?」

そのうえで、若い世代が伸びていくために必要なのは、米田によれば、「まず、自分はどこが強くて、どこが弱いのかという特徴を知って、次に、それをどのように活かしていくかを考えていく」こと。「もっとも、僕がそれをできるようになったのは、料理の世界に入った後、フランスに行く前の28歳、29歳くらいのときでしたけどね」と笑う。

「才能」と認められた時点で進化が止まってしまう

もうひとつ、変化と進化を続ける米田には、彼ならではの考え方がある。「『この人には才能がある』と、すぐに見出して褒めて育てるというようなやり方がありますが、才能というのは『才能』と認められた時点で進化が止まってしまう」というのだ。

「自分には才能なんてないと思うから努力をしないといけなくなるわけで、才能はないと思った方が、もっと伸びるんじゃないかな。野球の選手でも、すでに一流なのに『いや、駄目なんですよ。もうちょっとなんとかうまくいけないかなぁ』と悩んでフォームを変えちゃって、さらにすごい成績を出したりしますよね。だから、周りに何と言われようと自分には才能はないと思っていられることは、素晴らしいことなんです」

若い世代にとって貴重なアドバイスだが、米田の場合、これを若い時分のみならず、50歳まであと数年という今に至るまで、自身に適用してきた。才能はないのだからと、常に考え、試し、挑戦し続けてきたのだ。


モンブランの万年筆やペンとは、10代のころからともにあった。今でもバースデイカードの作成やサイン、愛読書へのカキコミにモンブランが手放せない。10年使い続けている名刺入れもモンブランのもの。「いいものは他に乗り換えようと思わせない。それにやっぱり綺麗なんですよね、モノとして」

モンブランの万年筆やペンとは、10代のころからともにあった。今でもバースデイカードの作成やサイン、愛読書へのカキコミにモンブランが手放せない。10年使い続けている名刺入れもモンブランのもの。「いいものは他に乗り換えようと思わせない。それにやっぱり綺麗なんですよね、モノとして」

大阪・肥後橋に初めて自らの名を関したレストランを出店したのが2008年。翌年には早くもミシュランの3つ星獲得という大きな栄誉をつかむが、2012年にはフランス料理の看板を降ろして「自分の料理」を提供する店に変えた。「フランス料理を食べるならフランスに行けばいい。ここに来てもらうからには、ここでないと食べられない料理をお出ししたい」との考えからだった。

ランチ営業をやめ、価格も引き上げた。星の数は2つに減り、ゲストの来店は落ち込んで、赤字経営に転落した時期もあった。だが、“米田肇の料理”が理解され、海外のさまざまなレストラン・ランキングに選ばれるようになったこともあって、業績は回復。18年にはミシュランの3つ星にも返り咲いた。それも「フランス料理」ではなく、「イノベーティブ料理」分野での3つ星だ。


モンブランの万年筆やボールペンを複数所有する米田。写真は、2008年に自身のレストランを開店した際に購入したモンブランのボールペン「Etoile de Montblanc」(エトワール ド モンブラン、現在は製造終了)。「写真うつりを良くするために、コックコート(の胸)にモンブランを挿していました。箔をつけたくて(笑)」

「挑戦することは歩くことと同じで、必ずどちらかの足を上げないといけない。すると片足立ちで不安定になる。上げた足が着地すれば安定するけれど、また片足を上げて不安定。でも、これをやらないと前に進めない。だから僕は必ず、自分から不安定を作り出していきます。いま安定しているなと思ったら、いま止まってしまっていると気づかないといけない」

もう少し面白いことできないかなあと、いつも言っている

最近でも、オリンピック選手などアスリートの食餌指導を新たに手がけ始めた。「ガストロノミーがまだ入り込めていない分野というのが、まだたくさんあると気づいたんです。味覚についてはメディア化・電子化する研究も進んでいるので、いずれネット通販で味見ができたり、余命の短い人が病院でリクエストどおりの“最後の晩餐”を疑似体験できたりするようになるかもしれない。いくらでもアイディアは湧いてきます。自分たちとしたらまだ何もやっていないんじゃないか。『もう少しなんか面白いこと、できないかなぁ』と、いつも言っていますね、みんなで」。

世代では間違いなくOVER 30に属するのに、当人いわく、「まだ20歳のような気分。昨日社会に出たばかりというような感覚でやっている人の方が眼がキラキラしていて楽しいでしょ?」。UNDER 30世代にとって米田肇はまず、これまでイノベーションを実現させてきた先駆者であり、リスペクトの対象なのだが、同時に、これからイノベーションを起こしていく同志でもあり、ライバルでもある。



【Mark Makers】
「Mark Maker」とは、高い感度とオープンなマインドセットを持って、自らの道を切り拓き、揺るぎない足跡を刻んだ人、または刻もうとしている人。30UNDER30 JAPAN2019公式スポンサーとして迎えたモンブランとForbes JAPANが選ぶ6人からの言葉。

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#6 Coming Soon

Promoted by Montblanc Japan text by Hiroyuki Okada photographs by Keiji Hirai

VOL.8 BrandVoice

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