シーズン3の配信により、ネットフリックスの退会ユーザーの13%を呼び戻した「ストレンジャー・シングス」や、いじめの実態を限りなくリアルに描いた話題作「13の理由」などの社会現象を巻き起こす作品も多い中、筆者が一目置いている作品が「ブラック・ミラー」だ。
「ブラック・ミラー」はイギリスで2011年から放送されているアンソロジーシリーズで、テクノロジーが進化したことにより、その恩恵を受ける人々や社会をアイロニカルかつダークに描いている。1話ごとに完結する短編映画といっても過言ではないほどのクオリティで、2018年の第70回プライムタイム・エミー賞では脚本賞を受賞している。
今年6月に配信された待望のシーズン5も、全3話とやや話数が少なめの構成ではあったものの、いずれもこれまでの常識や既存の概念に問いかけ、倫理観を刺激するものばかりだった。今回のコラムでは、粒ぞろいの最新シーズン5の作品たちを紹介しよう。
(内容に触れているものがあるので、作品を鑑賞してからお読みください。)
ネットフリックス公式HPより
第1話「ストライキング・ヴァイパーズ」
愛する妻と暮らすダニーは、親友のカールに誕生日に格闘ゲームをプレゼントされる。それは、学生時代からの友人である二人が昔よく遊んだ「ストライキング・ヴァイパーズ」というゲーム。自らがゲームの世界に入り込める最新版のヴァーチャル・リアリティ(VR)で、痛みなどの感覚も感じられるというものだ。二人は学生の頃のように懐かしのゲームのキャラクターに扮して格闘をするも、その目的は徐々に歪み始める……。
ダニーは結婚しており、妻は妊娠を希望してるが、積極的に子作りをしたいと願う妻との体の関係はほぼないに等しい。そんな時、久しぶりに再会したカールとゲームの中で肉体関係を持ち、現実以上の快感を味わってしまうのだ。
この作品を見ていると、結婚生活とセックスを別のものとするダニーを責める気持ちにはなれない。愛を育んだのちに結婚した相手としかセックスをできないというルールは人間が勝手に作ったもので、その考えそのものが古くさいと感じる。
そもそもそれらは、それらは、私たちが都合よくこじつけた決まりだったのかもしれない。近い将来、時代と共に結婚の概念も変化してゆくとなると、どこまで自由になるのだろうか。
今や同性愛者同士の結婚が許される地域は増え続けているし、夫婦の形も今後は確実に変化してゆく。となれば、ダニーのような夫婦生活と性生活を分けるという新たな人間関係が当たり前になりうる日は、そう遠くないのかもしれない。