第2話「待つ男」
配車サービスのドライバーの男は、大手SNS運営会社の本社の前で車を止め、何かをじっと待っていた。そして若手社員を人質に取り、要求を突きつける。それは、「社長に直接電話を繋げ」というものだった。一体、男の真の目的とは?
しばらく会っていない友人に再会したにも関わらず、その友人の近況をきちんと把握していることがある。それは日頃からSNSで近況を見ているからだろう。膨大な数の「いいね」が飛び交う社会となった今、一日に数時間SNSを見るとしたら、一生のうちにどれほどの時間を費やすことになるのだろう? そして、それに夢中になることで失ってしまうものとは何なのだろうか? その男はSNSのせいで、かけがえのないものを失ってしまった。
インターネットやSNSでのコミュニケーションは今や生活の一部であり、「スマホ中毒者」という言葉はもう古いと感じるほど、それを否定できる人は少なくなっている。「待つ男」は、そんなSNSに取り憑かれている人々に警鐘を鳴らす。
ちなみに、ブラック・ミラー シーズン3の第1話「ランク社会」では、SNSの「いいね!」の数で人間性や信頼度が判断される近未来で、必死に「いいね!」を集める人々の姿が描かれているので、こちらもあわせてみてほしい。
第3話「アシュリー・トゥー」
シーズン5の最終話となる「アシュリー・トゥー」は、しばらくの間ドラマや映画に出演していなかったマイリー・サイラスがポップスターのアシュリー・オーを演じ、今シーズンで一番の話題作となった。
物語はこうだ。ティーンから絶大な支持を得るポップスター、アシュリー・オーに憧れる内気な少女レイチェルは、誕生日にアシュリーと同じ性格のロボット人形を買ってもらう。ロボットに心を開き夢中になるレイチェルだが、一方で本物のアシュリーは闇を抱えていた。歌手としての方向性に疑問を持つアシュリーと、それをコントロールしようとする周りの人間たち。彼女は昏睡状態のまま最新の医療技術で脳波を読み取られ、作曲活動を続けさせられそうになってしまう。
ひとりの人間として尊重されなければいけないはずのアシュリーの意思が無視され、まるで物のように利用される姿にぞっとしてしまう。けれども、もし技術が伴えば、リスナーを満足させ続けるために、このような強行に及ぶ者が現れることも安易に想像がついてしまう。果たしてアシュリーは、自分の意思を尊重することができるのだろうか?
劇中で使用されているのは、マイリーがアシュリー・オーとしてリリースした新曲。まるで「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」(かつてマイリーが主演したドラマ)かのように、ポップスターと普通の女の子という二面性を持ち合わせたキャラクターを演じるマイリーの姿は、昔からのファンにとって喜ばしいものだ。
「ブラック・ミラー」が見せてくれるのは、今よりもほんの少し未来に十分に起こりうる出来事だ。人類が築く文明は革新的で素晴らしいが、物事には作用と反作用がつきもの。果たしてテクノロジーの進化は、私たちの生活をより充実させてくれるのか、それとも、苦しめることになるのだろうか。
「こんな未来、誰が想像できる?」その答えは、きっとこのドラマにある。