そして、構築された仮想情報社会の「網」に絡め取られるあまり、われわれ生活者の間には「情報が多すぎる」という意識が芽生え始めている。種々の現象や意識の変化に接し、SNSとの関わり方を再考する現代人もおそらく少なくない。
そんな中、メディアの視点から「生活者」をとらえてきた博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所所長の吉川昌孝に、このSNSという生活者メディアと旧来メディアの差異や共通項、そして「インフルエンサー誕生」の瞬間について聞いた。
*SNSと「Buzz(ネット上のブーム、流行)」の20年史をインフォグラフィックで振り返った関連記事「プラットフォーマーの盛衰と世界を動かしたハッシュタグ」はこちら
関連記事内SNSと「Buzz」の20年史の始点は、グーグルがカリフォルニア州メンロパークのガレージで産声を上げた1998年だ。この年の9月、スタンフォード大ゲイツ・ビルディングの360号室でグーグルの検索エンジンについて説明したとき、サーゲイ・ブリンはこう「予言」している。
「『あと二、三十年もすれば、人間の知識のすべては、そして人間が生み出すどんな情報も、ビデオ画像を除けばみんなポケットに入れることができるようになるでしょう。(中略)こういうことは全部可能です。一つの中心地にそっくり丸ごと保管しておいて、それを活用すればいいのです。ぼくたちがやったのはそういうことです』(『Google誕生』(2006年、イースト・プレス刊)より)」
吉川は言う。「ただ、グーグルが始動し始めたこの頃のインターネット人口は世界でもせいぜい数千万人、しかも発信のハードルが高く頻度が限られたので、発信者はインフルエンス(影響力)をもたなかった。つまり、単に『生活者側がメディアを持った』だけでは、インフルエンサーは生まれなかったんです」。