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2019.10.03 07:30

CMにおける「15秒」。生活者メディアとしてのSNSが回帰する先

吉川昌孝


「インフルエンサー」とは誰か
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それでは、インフルエンサーはいつ生まれたのかだが、その前に、そもそもインフルエンサーとは何者なのだろう。



吉川は「俯瞰的、中長期的に見てオピニオンリーダーの役割をする人たちのこと」と答えた。メディア環境の変化が、オピニオンリーダーに違う呼び名や違う役割、存在意義を持たせるようになった、その例が現在の「インフルエンサー」なのだと。
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「マスコミだけの時代はひとくくりに『オピニオンリーダー』だったのが、今はブロガーとか『ツイッターの中の人』のように、プラットフォームごとにオピニオンリーダーがいます」。いわゆる「ロジャースの普及曲線」のイノベーターやアーリーアダプターが、メディア環境が変わったことによって「インフルエンサー」と呼ばれるようになり、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティらに影響を与えているというのだ。

また、アマチュアが情報を扱うようになった現在、受信者側、すなわち影響を「受ける」側も「発信者は素人」とわかった上で情報消費している、それぞれのプラットフォームの価値を捉えながら情報選択している、とも語る。

そして、SNS上の情報の多くは「ライフスタイルの一隅」、たとえばファッション(明日着るもの)や食(次に食べるもの)といったいわば即物的なものだけに影響を与えるが、と前置きした上で吉川はこうも言う。

「一口で影響といっても、その『深度』にはばらつきがある。ちょっとした流行の原因を作る発信者ではなく、その人の『存在自体』が生活者の本質に影響を与える人が、インフルエンサーと呼ばれるべきではないでしょうか」

生活者の情報リテラシーを「研磨」したもの

メディア環境研究所の調査によると、スマホの普及率は12〜15年にかけて、それまで2割弱だったところから急激に上がり、一気に7割にまで浸透した。このスマホの浸透とSNSアプリの登場がインフルエンサーの登場に大きく影響した、と吉川は指摘する。なかでも特に影響したのが、すでに10年に米国で開設されていたインスタグラムであるというのだ。

フェイスブックが圧倒的ブームになったのは11年、ツイッターの勃興はその前の09年ごろだが、この時も「インフルエンサー」という言葉は生まれていない。インフルエンサーが市民権を得たのは、乃木坂46の「インフルエンサー」がヒットし、「インスタ映え」が流行語大賞になった17年。同所の「メディア定点調査」でも、インスタの利用率が2割を超え、フェイスブックがそれまでの上昇から横ばいに転じたのが17年。
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文・構成=石井節子

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#インフルエンサーの研究

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