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関係密度を軸にした、ある「回帰」

ネットが登場するまでは、「テレビに出ている」ことが社会や時代に影響を与える大きな条件だった、とも吉川は言う。だが、前述の「メディア定点調査」でもマスメディアの接触時間とデジタルメディアとのそれが拮抗する結果が出ている現在、両者の影響力はまさに等価だ。「テレビと視聴者の距離に比べて、受信者の生活地盤そのものから発信している(インスタの)発信者とそのフォロワーの距離は近く、関係密度は信じがたく濃い。マスメディアで言えば、パーソナルメディアの性質が強いラジオと似ています」。リスナーがDJにハガキで人生相談をした時代、ラジオは送り手と1対1でつながる感覚を抱かせた。実はそこに回帰した究極の「個人メディア」がSNSなのかもしれない、と。

そして、マスメディアに登場しながらSNSを使うインフルエンサーも増えている。だがSNSを単にマスコミの代替チャネルとして使ったのでは、視聴者(フォロワー)との距離を縮めることは無理だ。「ましてや、マスコミでは『ハレ』(あるいは前向きな)の声で語るのに、生活者メディアでは『ケ』(あるいは「闇」)の声でしゃべるなど一貫性が欠けてしまうと、誰かの価値観や人生に影響を与えることは難しいでしょう」。

ただ、SNSという生活者メディアにはもうひとつ利点がある。「それは、最終成果物としての自分ではなく、揺れ動く自分の気持ちの過程を『その理由』も含めて見せられることです。だから、過程を生活者メディアで中継、『成果物』をマスメディアに露出、でもいいんです」。

重要なのは、ブレずに本当に強烈に「発信したい」と思い、それを実行している人がインフルエンサーになっていくということだ。常に自分が「晒されている」ことを自覚し、誰からも守られない覚悟を自分に宣言し続ける人。そしておそらく、いまの生活者のリテラシーは、そういう「覚悟」の在否をも見透かす。

5G時代の「オピニオンリーダー」

さて、ここ20年余りの主要プラットフォーマーの台頭、そしてSNSを通じて拡散されたニュースを示した下の年表の右方向に到来する本格的な5G時代。より高画質なコンテンツ、あるいはARやXR、MRを使った空間プラットフォームが台頭するフェーズでは生活者のメディア環境も激変すると吉川は予測する。「おそらくまた違うスタイル、『違う呼び名』のオピニオンリーダーが出てきて、『昔はインフルエンサーなんて言っていたね』ということになるでしょうね」。

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よしかわ・まさたか◎博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所所長。メディアと「生活者」の関係に注目し、生活者による「テクノロジー」の受容のされ方や、生活者の態度の変化が「ビジネス」に与える影響を考える。博報堂生活総合研究所時代には、未来予測プロジェクトのリーダーとして「態度表明社会」(09年)「総子化」(12年)「デュアル・マス」(14年) など、生活者とマーケティングの未来像について発信した。

文・構成=石井節子

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