「年を重ね、運にも恵まれると、2つのことに気づく。それは、自分が好きなことが何で、自分が得意なことが何であるかということだ。私の場合、その答はアーリーステージの企業を経営することだ。私はカオスが好きで、100個のタスクを同時に処理することが心地よいのだ」と61歳のランドルフは話す。
ランドルフは今、起業家のメンターを務めることでスタートアップの興奮を味わっているという。彼は当初、スタートアップ数社のアドバイザーを務めたが、起業家の多くは彼の名前をプレゼン資料に載せたいだけだった。その後、彼は数年をかけ、起業家に提供する助言の最適なバランスは、ビジネスに関する助言が30%、私的なことに関する助言が70%であることに気づいたという。
「私が起業家にアドバイスするべきことは、資金調達を借入かエクイティのどちらにするべきかといった内容ではない。起業家はとても孤独な仕事だ。私は彼らが頼ることのできる数少ない人間なのだ」
彼は、メンタリングをする起業家についてプロフェッショナルとパーソナルの両面で熟知できるよう、指導の対象は2、3社に絞っている。「彼らは午前2時にパニックに陥って電話をしてくる。彼らのことが好きでなかったり、電話で話すことが嫌な場合でも、彼らが危機に直面しているときには助けるのが私の役割だ」とランドルフは話す。
ランドルフは、メンターとなるスタートアップには投資しないことをルールとしている。「私はスタートアップに対して、“お金か時間のどちらか1つを提供できる”と話している」と彼は言う。
アルファベットが買収した企業も支援
しかし、これまでに例外が1社だけあるという。それは、ビッグデータ分析企業の「Looker」だ。ランドルフは、同社が設立された2012年から創業メンバーのメンターを務めているが、シードラウンドで出資をした上、同社の最初の従業員となった。彼の肩書は、ABC(Anything But Coding:コーディング以外の全て)だった。
ランドルフは1年半後に従業員を辞めたが、取締役として同社に残った。そして今年の6月、アルファベットがLookerを26億ドル(約2800億円)で買収すると発表した。(ランドルフは、自身が保有するLookerの株式についてコメントしていない。)
彼によると、他に支援しているスタートアップは、Lookerとは程遠い状況にあるという。ランドルフによると、起業家が犯しやすい2つの過ちは、必要以上に考え過ぎて麻痺することと、優先順位をつけないことだという。また、彼は起業家たちに対し名声や富を期待し過ぎないよう言い聞かせている。
「人々は映画“ソーシャル・ネットワーク”を見て、富やパーティーなど華やかな面ばかりに注目がちだ。しかし、起業すると仕事は過酷で精神的につらい状況が続くのが実態だ。そうした状況を楽しむことができなければ、起業するべきではない」とランドルフは話す。