戦闘が繰り広げられるナイジェリアとコンゴ民主共和国。暴力に怯えるソマリア・エチオピアなどの「アフリカの角」、そして草原地帯から砂漠化が進むサヘル地域。私は、そうした国や地域で長引いている紛争に苦んでいる何万もの人々が置き去りにされることのないよう、人道的観点からの発展・開発に光を当てるため来日した。
第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に出席した筆者(横浜市、2019年8月28日)(c)ICRC
TICADを主催する日本政府のアフリカへの思い入れと決断に、私は多くの希望を見出だしている。今回のTICADには、アフリカ大陸から40名以上の首脳級が出席した。アフリカは世界でもトップレベルの経済急成長国を7つ擁し、人々は技術や変化、改革を急速に取り入れつつある。
私が感心したのは、日本のアフリカ支援に対する本気度と質の高さだ。日本の民間投資は2016年以降3年間で200億ドルにも及び、量ではなく質重視の貢献を行っている。
私にとって、そして世界各地の紛争地で人道支援を行う赤十字国際委員会(ICRC)にとって、今回のTICADは非常に有意義なものであった。過去のTICADでは、戦争や紛争をはじめ、そこから波及する人道危機など、アフリカの平和や安定を脅かす要素に焦点を当てることは、あまり歓迎されなかった。ビジネスや投資を呼び込むうえで懸念材料となるからだ。
しかし今回は、開会時に安倍首相からアフリカの平和と安定を目指した日本のイニシアチブが示されたように、「人道─開発─平和」というネクサス(連鎖)に多くの関心と注目が集まった。
経済成長を支えるには、平和と安定は欠かせない。人道を掲げる者と企業リーダーの提携を促し、人道面でこれまで以上に大きく、かつ広範にインパクトを生み出すこと。アフリカにとって、その機は今まさに熟しているといえる。
新たな資金調達の道を見つける必要性
何十年とは言わないまでも、アフリカでは大きな紛争が長年にわたって続いている。数十万の人々が殺され、安全を求めて家をあとに逃げ出す人々が数百万に上る。それに、気候変動や武器の拡散、地域特有の貧困などの要素が加わって、アフリカ大陸の紛争が今後も悪化の一途をたどることを私は懸念している。
TICADでは、複数のアフリカの首脳と二者会談の場も持った。コンゴ民主共和国のチセケディ大統領とは、避難民や性暴力、食料危機、生計を立てるための収入源の確保、医療など、現地の人道ニーズに見合ったICRCの活動の継続を保証し、DDR(武装解除・動員解除・社会復帰)など国内の治安確保についても話し合った。
コンゴ民主共和国チセケディ大統領との二者会談(横浜市、2019年8月29日)(c)ICRC