今や「違法ドラッグのeBay」とも呼ばれるのが、ネット上の闇マーケット。その先駆けとなった「シルクロード」は2013年12月に摘発。その後生まれた「シルクロード2.0」(昨年11月に摘発)も月間800万ドル(約9億円)の売上を上げていた。
薬物や銃、盗んだカード情報などを売買する違法サイトは、その後も急成長を遂げている。この記事では先日、運営者らが売上を持ち逃げし、サイト閉鎖となった「Evolution」についてリポート。推定で年間5千万ドル(約59億円)を稼ぎだした、地下ビジネスの実態に迫る。
違法サイトEvolutionが閉鎖された。昨年1月に生まれたこのサイトは、有名闇市サイト「シルクロード」を超えるスピードで成長したが「サイト管理者らが金を持ち逃げした」と、スタッフの一人が告発している。匿名で使えるTorネットワークを駆使したこのサイトでは、2万近い薬物や拳銃、タバコの箱に見せかけたスタンガンなどの武器も売られていた。
NSWGreatと名乗るPR担当者によると、VertoとKimbleと名乗る管理者らが、ユーザーから預かったエスクロー資金を持ち逃げし、その横領額は1500万ドルに及ぶという。
「本当に残念だが、VertoとKimbleはわれわれを裏切った。私自身も2万ドル以上のカネを盗まれた。奴らは人間のクズだ」とPR担当者は述べている。
Evo(サイトの通称)からの入金が止まったという苦情は、様々な関連フォーラムでも話題になっていた。ドイツ警察が先週大規模な捜査を行った情報サイトにも「ここでの取引をやめろ、ベンダーよ。必死で逃げろ」とのメッセージが残されていた。
彼らは一体、どのくらいの利益を上げていたのだろうか。
ネットの地下ビジネスに詳しいセキュリティ専門家、グレッグ・ジョーンズが本誌の依頼で試算したところによると、サイトのオーナーらは取引額の2.5~4パーセントの手数料を得ていたという。昨年一年間で約47万件の取引があり、平均取引価格を110ドルと仮定すると、年間売上は5225万ドルと見積もれる。日本円にして約60億円に迫る金額だ。
Evolutionは急速に成長し、さらに伸びるはずだった。登録アイテム数は今年2月時点で3万件を突破。ユーザーフォーラムには約3万人が参加し、毎日150人が新規加入していた。
ロンドンのサイバーインテリジェンス企業、デジタル・シャドウズの調査によると、同サイトが扱う品目には、金融機関が保有する個人データも含まれていたという。販売者らは、データが本物であることの証明として、その一部を無料サンプルとして公開していた。
「彼らはさらに、金融機関の内部の人間を、情報提供者としてスカウトする動きも進めていた」と、デジタル・シャドウズの担当者は述べている。
掲示板サイトRedditのユーザーは「盗んだカネを取り込んだビットコインのアカウントを発見した」と報告している。本物かどうかは定かではないが、そこには先週、多額のビットコインの入金があり、現在のところ43,000BTC(現在の換金レートで1220万ドル)の残高があるという。
本誌の取材に対し、Evolutionの管理者は「逃走した2名とは直接の面識は無かったが、その道のプロとして信頼していた」とコメントを寄せた。
「この手のサイトが社会通念上、許されないことは分かっている。誰だって犯罪や暴力には関わりたくないものだ。けれども、誰もが人生の成功者になれる訳ではないのが現実なんだ」
Evolutionの消滅を受けて、HonestCocaineやUKGanjaといった違法ドラッグ販売者らは、独自のサイトを立ち上げる動きを開始した。類似サイトのAgoraにも大量の顧客が流れ込んでいる。巨額の売上を生み出す闇サイトの根絶は、ほぼ不可能と思えるのが現実だ。