可能性を秘めたイギリスのスパークリング・ワイン

ワイン業界でも、気候変動は大きな話題の一つだ。地球の温暖化により、世界のワイン産地に変化が起きている。

その例として挙げられるのが、ワイン市場や消費国として、ワイン産業を牽引してきたイギリスだ。ロンドンは、ワイン・トレードの中心地として、世界のワイン市場を動かす老舗のワイン商や影響力のあるワイン評論家がしのぎを削っている。しかしながら、緯度の高さと寒冷な気候から、自国での良質なワイン造りは難しいとされていた。

それが近年では、気候変動や栽培・醸造技術の向上により、一部の地域においてブドウの栽培が急増している。なかでも、冷涼な気候や土壌を活かした、高品質なイギリス産のスパークリング・ワインに注目が集まっている。

イギリスで高品質のワイン造りを目指す

シャンパーニュが、世界のスパークリング・ワインのベンチマークであることに異論はないだろう。実は、イギリス南東部には、そのシャンパーニュ地方と同じ石灰質の土壌が広がっている。冷涼な気候に加えて、緯度が高く、日が長いため、ゆっくりとブドウが育つという特徴もある。

温暖化に伴い、ワイン生産者たちが、より冷涼な土地を模索するなかで、イギリスに目が向けられているというわけだ。



そんなイギリスの代表的なスパークリング・ワインの生産者の一つが、ガズボーン・エステート(Gusbourne Estate)だ。

シャンパーニュの愛好家だったアンドリュー・ウィーバー氏が創設したワイナリーで、2010年に最初のワイン(2006年ヴィンテージ)をリリースした。間もなく、ワイン批評家から高評価を得て、2013年には世界的なワイン品評の団体であるIWSCから、英国スパークリング・ワインの最優秀生産者に選ばれるなど、質の高い生産者としての地位を築いている。

ガズボーンは、イギリス南東部のケントに60ヘクタール、ウェスト・サセックスに30ヘクタールの自社畑を持ち、シャンパーニュと同じ、ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの3種類のブドウから、同じ製法でスパークリング・ワインを造る。品質をコントロールするため、買いブドウは使わない。

ケントの畑は、海岸から6マイルと海から近く、その影響で寒冷な気候が和らぐ。土壌は粘土と砂のローム土壌。2004年にブドウの栽培を開始した。南向きの畑では、厳しい気候条件を克服するため、ブドウの木の仕立て方や霜被害の予防など、様々な工夫が見られる。

イギリスは雨量が多いこともブドウ栽培に適していない理由の一つだったが、この場所は、イギリスで2番目に雨の少ない地域だという。
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文・写真=島 悠里

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