日本には、現代の半植民地となる危険性を伴う中国の「債務のわな」からアフリカ諸国を救うという新たな使命がある。債務のわなに陥れば、アフリカの各国は中国に対する巨額の債務を抱え、主要な資産の支配権を同国に譲らざるを得なくなる。例えばスリランカは、主要な港2カ所の運営権を期限付きで中国に譲っている。
日本は大規模なインフラプロジェクトのために資金を必要とするアフリカ諸国に対し、融資ではなく「支援」を行ってきた。8月末に横浜で行われた第7回アフリカ開発会議(TICAD7)で安倍晋三首相は、この点を繰り返し指摘。同時にアフリカ各国のリーダーに対し、中国から過度に借り入れることの危険性を警告した。
一方、中国共産党系の環球時報は先ごろ、社説で日本の支援に対する異議を唱えた。日本はアフリカでの影響力を高めるために、支援を利用していると主張する。
何に関する影響力だというのだろうか?──南シナ海やそれ以外の安全保障問題について協議する国連などで、アフリカ諸国が投じる「票」に影響力を及ぼそうとしているのだという。だが、この点に関しては、日本の方が問題を抱えている。アフリカの大半の国の票は、中国がすでに確保している。
米バンヤンヒル・パブリッシングのシニア・リサーチアナリスト、テッド・バウマンは、「中国と日本がアフリカに関与したいのは、主に対外政策上の理由からだ」と語る。
「アフリカ諸国が独立し始めた1960年代以降、外国の勢力は、国連その他の国際機関においてこれら各国に与えられている票を確保しようと努めてきた。冷戦時代に大きな問題となっていたのは、米国とソ連という2つの超大国の対立だった」
その後、状況は変化した。バウマンによれば、「現在では、東シナ海と南シナ海で領有権を争う中国と日本のどちらを支持するかが問題になっている」。そして、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗しようと「自由で開かれたインド太平洋戦略」を打ち出した日本にとって、問題はより差し迫ったものになっている。
日本には、中国に比べて大幅に不利な点がある。バウマンによると、それは「中国と異なり、日本政府は自国の民間企業に対し、アフリカへの投資を指示できない」ことだ。
「そのため日本は、アフリカ各国の間で高まる懸念を利用しようとしてきた。中国が手掛ける開発事業に関する契約は、すでに債務を抱えている各国に対する中国政府からの巨額の融資を含む場合が多い」
バウマンは、日本には独自にアフリカに提供できるものがあると述べている。それは、「中国よりも魅力的な条件を提示したより質の高いインフラプロジェクトだ」。
「例えば、日本政府が支援するプロジェクトは、アフリカ各国の地元の労働者を雇用する。それに対し、中国は通常、何千人もの中国人労働者を送り込む。そのため地元の人たちの間では、中国人への反感が大幅に高まる。また、日本が主導する事業の契約には、中国ほど厳しい条件は含まれない」
だが、それでもなお、日本は中国に遅れを取っている。そして、日本には自国が抱える債務の問題もある。アフリカ諸国の債務問題に対処する以前に、日本は自らの問題に取り組まなくてはならない。