ビジネス

2019.09.04

化粧品業界を変革する「畑で生まれたエタノール」

ファーメンステーションは日本有数の米どころ、岩手県奥州市にある。夏には辺り一面新緑に囲まれる工場で、休耕田でできた米など「未利用資源」からエタノールを抽出する。独自開発の発酵技術が同社の強みだ。

ファーメンステーションは、無駄のない地域循環型事業を目指し、エタノールの製造過程で生まれる副産物「米もろみ粕」も飼料や石鹸の材料として活用。環境に優しいエタノールは化粧品業界に注目され、大手メーカーからの引き合いが増えている。

酒井が発酵技術に興味を持ったのは、新卒で入った銀行員の時。バイオ燃料を使った「循環型社会」のアイデアに魅了された。32歳で東京農業大学に入学。エタノールの製造方法を学び、岩手県奥州市の実証実験に関わったのをきっかけに、2009年に会社を設立した。

同社は、日本酒の醸造技術にヒントを得て、小規模設備で少量の原材料から高純度のエタノールを製造する技術を確立。エタノールの販売だけでなくスプレーや石鹸など自社製品の開発、近年ではJRや牧場など多業種とのコラボレーションに注力している。

経営者として意識が大きく変わったのは、2年ほど前。アクセラレータ・プログラムに参加し、世界を目指す起業家仲間に出会った。地道に事業を続けてきたが、それまで会社をスケールさせる意識が少なかった。 会社をもっと大きくすれば、循環型社会の実現に向けて、大きな社会的なインパクトを与えられる。昨年、一昨年と資金調達を実施し、「海外の市場にも出たい」と意気込む。 いま、酒井が気をつけているのは「小さくならないようにすること」だ。「目の前が半径数kmから世界に広がった気分です。これからの可能性にぞわっと武者震いしています」


さかい・りな◎国際基督教大学(ICU)卒業。1995年に富士銀行(現・みずほ銀行)に入行。外資系金融機関を経て、発酵技術を学ぶため東京農業大学に入学。2009年にファーメンステーションを設立した。

文=成相通子 写真=帆足宗洋

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