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2019.09.01 10:00

雨水を飲料水にして販売 米メーカーが「水」に込める思い

Photo by Mark Henderson, courtesy of Lazy Magnolia Brewery

Photo by Mark Henderson, courtesy of Lazy Magnolia Brewery

レスリー・ヘンダーソンは2019年8月のある雨の日、米ミシシッピ州キルンのレージー・マグノリア・ブルワリー(Lazy Magnolia Brewery)の外に立っていた。
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醸造所の共同創業者・管理者を務める彼女の、雨に対する視点はユニークだ。「屋根を打つ全ての水滴が利用される」と言う彼女の醸造所では、この全ての雨がボトル詰めされている──。

2005年に創業されたレージー・マグノリアは、1907年に州全体で酒類製造販売が禁止されて以来、初めて設立されたパッケージング醸造所(ビールをビンや缶などの容器に入れて販売する醸造所)で、ミシシッピ州では最も老舗だ。同社は、雨水を飲料水として使うことが許可されたわずか4つの州の一つであるミシシッピ州を拠点とし、「リチャーズ・レインウオーター(Richard’s Rainwater)」のために炭酸水をボトル詰めしている。


Photo by Mark Henderson, courtesy of Lazy Magnolia Brewery
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雨水を飲料水としてボトル詰め

リチャーズ・レインウオーターの始まりは、創業者リチャード・ハイニヘンが自宅に設置した雨水貯水システムという、ひっそりとしたものだった。その後、ハイニヘンが設置したシステムに隣人らが気づき、それをビジネスにしたらどうかと促した。2002年、ハイニヘンは雨水を集めてボトル詰めして販売する許可を規制当局から得た。

リチャーズ・レインウオーターは現在、ドリッピング・スプリングスかレージー・マグノリア・ブルワリーのいずれかで1インチ(約2.5センチメートル)雨が降るたびに3万ガロン(約11万3560リットル)以上の雨水を集め、200万本以上のボトルを生産している。レージー・マグノリアのミシシッピ州施設の利用は、今年許可されたものだ。

同社の次の目標は、米国全土のコミュニティで雨水の収集を開始し、ボトル入り飲料水を長距離輸送する必要性をなくすことで、今後、オースティンやアトランタ、ヒューストンの醸造所とも提携する可能性がある。

リチャーズ・レインウオーターのテイラー・オニール最高経営責任者(CEO)は、雨水を飲料水として販売することが「世界でも特に大きな問題の一つに対する、エレガントでシンプルな解決策だ」と言う。オニールによると、清潔な雨水を提供する鍵は「まず最初から汚れないようにすること」だ。

屋上で集められた雨水は、低エネルギーのろ過・処理システムに排出される。屋根やその他の表面に存在し得る汚染物質を全て取り除くため、最初の一定量の雨水は毎回廃棄される。雨水は不潔だと思われるかもしれないが、化学物質の流出がないため、エネルギーや薬剤を大量に使用した処理は必要ない。
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翻訳・編集=出田静

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