ビジネス

2019.08.26

製造業の調達領域に革命を起こす。元マッキンゼーが狙う「モノづくり界のアマゾン」 #30UNDER30

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サービス開始からわずか2年弱で発注利用社数は約4000社に上る。それも、パナソニックや川崎重工業、YKKなど錚々たる顔ぶれだ。また、提携する加工会社も150社に上り、中には「CADDi」による新規受注が売り上げの4割近くを占めるようになった会社もある。

「とても珍しいことだと思うのです。製造業という、一見堅い業界と、創立2年にも満たないスタートアップ。ともすると、僕らは“黒船”のように思われかねないけれど、『一緒に新しいことをやりたい』と思ってくださる人たちがたくさんいる。すごく嬉しいことです」

これまで手つかずだった調達領域に革命を起こしたのは、キャディが開発した「3D CAD自動見積システム」だ。そのコア技術を支えるのは、元アップルで共同創業者兼CTO(最高技術責任者)の小橋昭文が率いる強力なエンジニアたち。いまやどの企業もいかに優秀なエンジニアを確保するかが経営戦略のカギを握るが、製造業の調達という分野ながら、GoogleやAmazonといった最先端のIT企業と競合するほどの人材がキャディへ集結している。彼らを惹きつけているのは、40兆円規模という多品種少量生産の部品市場の成長性に加え、その社会的意義の大きさだ。

パートナーである加工会社にとって、後継者問題や人材不足、あるいは資金繰りの悪化は、目の前にある大きな課題。無駄だらけの製造業界をテクノロジーによって効率化し、職人たちが本来すべきことに集中できる環境をつくる。受発注関係の不均衡を是正し、経営の健全化を促進する──。この「難問」に挑むことは、エンジニアにとって大いに奮い立たせられるミッションといえるだろう。

「これまで調達領域は、人の頑張りだけでなんとか持ちこたえているような状況だった。そこに少しずつテクノロジーを介在させることで、本当に頑張っている人が報われるような仕組みをつくりたい」



モノづくり産業のポテンシャルを解放

モノづくり産業は、近年、国単位では中国や韓国が台頭しているものの、メーカー単位では安川電機、ファナックなど、依然として世界シェアの高い日本企業は数多い。そして、それを支える高品質な部品は、日本の国際競争力の源泉でもある。
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文=大矢幸世 写真=小田駿一

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