この声明は、企業の目的とは何か、またコーポレート・ガバナンス(企業統治)にいかに取り組むべきかを、根底から覆すものだ。
・この声明に署名したのは、経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル(Business Roundtable)」に所属するCEO181人だ。公共政策に関するロビー活動を行なう同団体には、アマゾンやウォルマート、JPモルガン・チェース、アップルなどのCEOが名を連ねている。
・声明では、方針転換の具体的内容は示されていない。その代わりに、顧客や環境、従業員、サプライヤー、さらには社会全体を尊重することを含む、ハイレベルな目標が明らかにされている。
・ビジネス・ラウンドテーブルは1997年からその原則に、「企業は主に株主のために存在する」と明記してきたが、「企業は、株主のためだけに存在すべきではない」と明記したのは今回が初めてだ。
・新たに声明を発表したのは、企業の役割を今の時代に合わせることが目的だという。声明では、「アメリカの人々はもがき苦しんでいる。熱心に働いても報われないことが多い。また、労働者が経済の急速な変化に適応できるようにするための取り組みも不十分だ」と述べられている。
主な批判:CEOたちがそう宣言したにもかかわらず、社会活動家や労働組織のほか、2020年米大統領選挙出馬を目指す、進歩的な考えを持った民主党の候補者たちは、大手企業CEOに対する批判の手を緩めていない。企業は消費者に害をなし、劣悪な労働条件を放置し、労働者を犠牲にしてCEO報酬を増やしていると主張している。
例えば大統領選候補者バーニー・サンダースは、6月にウォルマートの年次株主総会に出席した際、ウォルマートの最低賃金を時給15ドルに引き上げるよう提案したほか、時間給従業員にも取締役会の議席を与えるよう提案した。ただし、提案は否決されている。
また、別の大統領選候補者エリザベス・ウォーレンは、アマゾン従業員が2019年7月に、会員限定セール「プライムデー」の最中にストライキを計画した際に支持を表明していた。
背景:CEOがかつてないほど多額の報酬を得るようになっていることがある。米シンクタンク経済政策研究所(EPI)の分析から、2018年には、大企業のCEOは、一般労働者の給与と比べて278倍の報酬を手にしていることがわかった。1965年は20倍、1989年は58倍であり、その差は広がっている。