電気自動車(EV)とソーラーパネルの開発を除外して分析し、財務に関する複雑な計算を正当に行えば、導き出される唯一の結論は、テスラはすでに失敗しているということだ。
マスクが持つ最も優れたスキルは、資金調達能力だ。だが、過去5年間に新たに調達した資金(200億ドル、約2兆1280億円を超える)は、テスラの損失をさらに膨らませ、レバレッジ比率をはるかに高く引き上げることにつながった。
株主にとっての価値は生み出されていない。テスラに起きているのは、赤字の増大と株式の希薄化、新たな債権者の増加だ。その決定的な証拠は当然ながら、同社の株価だ。
2014年8月20日に255.71ドルだった同社の株価(終値)は、2019年同日には225.86ドルとなった。2018年8月、マスクが自社株の非公開化に向けた「資金を確保した」と発言した数日後の株価は387ドルだったものの、その後は大幅に下落している。
だが、これは、テスラに関する問題の一部を明らかにするものにすぎない。同社は株主価値だけでなく、その経済的価値も驚くべき勢いで失っている。さらに、価値を破壊していくテスラのやり方に、変化を起こすものがあるとは全く考えられない。
事業環境も悪化
テスラの製品にとっての最終市場は、明らかに弱まっている。EV購入を促すために米連邦政府が実施していた税額控除は、7月1日から50%減額された(2019年末で終了)。欧州の自動車販売台数は今年上半期、前年同期から3.1%減少した。最も重大な問題は、中国市場での売上高が13カ月連続で減り続けていることだ。
テスラの資本にさらに悪影響を及ぼしたのは、上海に「モデル3」を生産する「ギガファクトリー3」の建て始めたことだ。開始のタイミングは、それ以上ないほど最悪だった。
また、太陽光パネルの生産から設置までを手掛けるソーラーシティが下方スパイラルに陥っていることは、すでに以前から伝えられている。だが、テスラは契約上、市場が縮小する中でも、ニューヨーク州バッファローにある“不要な”太陽光パネル工場、「ギガファクトリー2」への投資を続ける義務がある。
過去5年間の変化
やみくもにマスクを信奉する人たちにとって、今後の見通しは暗い。価値を破壊してきたテスラの歴史を進んで大目に見てきたことからも、マスクに関する彼らの分別のなさは容易に見て取れる。
筆者はどの企業についても、評価するのに最適な期間は5年だと考えている。2014年と2019年の第2四半期(4~6月)の業績を見れば、驚くべ数字が示されている。
発行済み株式の総数は、この間に44%増加。負債は450%増えた。営業赤字も大幅に増えている。2014年第2四半期は2875万ドル、2019年同期には1億6745万ドルだった。理解し難い数字だ。
テスラのビジネスモデルは機能していない。そう結論付けることは避けられない。マスクに残された時間は、そう長くはない。