日本国内で「アクセラレータ」といえば、大企業単独では生み出せない革新的なサービスを、スタートアップと連携で創出しようとするケースが多い。しかし、500 KOBEでは、スタートアップの成長に主眼を置き、大企業との連携はその一類型だと割り切っている。
それゆえ、ベンチャーキャピタルからどれだけの資金調達ができたかが成果指標だ。2016年と2017年に、500 KOBEに参加した38社の調達額は、実に85億円。民間のプログラムを含めても、これだけの数値を残しているものは国内にない。
参加企業のひとつ、国内で有名レストランの予約から決済までを提供する「Pocket Concierge」(2016年参加)は、今年1月、米アメリカン・エキスプレスに買収され、いまや同社の完全子会社となった。
また、「Nature」(2017年参加)では、外出中でもエアコンなど家電を操作するスマートリモコンを開発し、8月、DeNAなどから5億円を調達したことを発表した。まさに朗報が続々と届き、シリコンバレーVCの実力が、日本で余すことなく発揮された結果ともいえよう。
神戸市側の要望で舵を切る
500 KOBEはこれまでデジタル領域全般を対象としてきたが、7月29日、2019年はデジタルとヘルスケアを組み合わせた「ヘルステック」に特化させると発表した。なぜ、成功してきたモデルを変えるのか。業界には衝撃が走った。
もちろん、ヘルスケアへの注目は高まっている。ジャパンベンチャーリサーチがまとめた2018年の国内スタートアップの資金調達によると、ヘルスケアは、分野別では最多の155社が調達し、調達総額の529億円はフィンテックに続く2位。パワフルな投資が相次ぐ分野である。
実を言えば、「ヘルステック」へと舵を切ったのは、500 Startupsと組み500 KOBEを催す、神戸市側の要望によるものだ。
いまから21年前、阪神・淡路大震災からの復興に向けた国家レベルのプロジェクトとして、「神戸医療産業都市」と呼ばれる街づくりがはじまった。そして、グローバル社会の中で、日本が21世紀に何で勝負できるのかを考え、「ライフサイエンス」に白羽の矢を立てた。
注目すべきは、この時点で、京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞で誰もが知るようになった「再生医療」に、いち早く光を当てていたことだ。