しかし、専門家はこれらの事件とゲームの間に相関関係はないと述べている。トランプは8月5日朝の演説で、「我々は暴力を美化することを止めねばならない。残酷で不気味なビデオゲームが世間に広まっている」と述べた。
しかし、ワシントン・ポストの報道によると1990年代からゲームの売上は伸びたものの、若年層の殺人事件の件数は減少傾向にある。米国の秘密捜査部と教育省が2004年に発表したレポートでも、銃乱射事件の主犯がゲームに関心を示す割合は12%でしかないとされた。
オックスフォード大学が今年発表した研究論文でも、ゲームの利用時間の長さと暴力事件の間に相関関係は存在しないとされた。さらに、トランプ政権が2018年に発表したレポートにおいても、ゲームと銃乱射事件の間に関連性は見いだせないとされていた。
しかし、そんな状況下においてもカリフォルニア州のケビン・マッカーシーや、テキサス州副知事のダン・パトリックなどの共和党議員らは、銃乱射事件の背景にビデオゲームがあると主張した。
ビデオゲームが銃乱射事件を誘発するという説は、1999年に15人が死亡したコロラド州のコロンバイン高校銃乱射事件の主犯格の2人の少年が、「Doom」というシューティングゲームを好んでいたことから始まった。それ以降、ゲームと銃乱射事件の関連を指摘する声が高まった。
しかし、2017年にアメリカ心理学会は政治家やジャーナリストらに対し、ビデオゲームと銃乱射事件を関連づけることを止めるように呼びかけた。今後はゲームメーカー側から、この件に対する何らかの声明が出されることを期待したい。
ゲームが人間の暴力性を助長するという議論は古くからあり、アーケードゲームの古典として知られる「Death Race」が1976年にリリースされた当時も、このゲームが人々の倫理観に悪影響を及ぼすと主張した人たちがいた。