ビジネス

2019.07.30

DeNA「100億円ファンド」設立の真意 南場智子氏インタビュー

南場智子氏


「届けるDelightの大きさにおいてグーグルをも超克するようなサービスやプロダクトを提供したいという思いですが、その点ついてはこれまでのところ、思いの1割にも到達していません。だからこそDeNA自体もこれまで以上に目線や目標を高くし、大きな発展を続けていきます。これをDeNAだけではなく、志を共にするさまざまな企業や個人とゆるやかに繋がりあうことで、これまで以上に大きなDelightを世の中に届けられる、そんな会社を目指します」

日本のスタートアップエコシステムに世界的な競争力を

また、こうした取り組みによって、日本の起業のハードルを下げたいと南場さんは語る。

「日本から世界的なスタートアップを生み出していくためには、やはり起業家の量、質を桁違いに拡大する必要があります。ベンチャー・ビルダーによって起業のハードルを下げる。背中を押す。起業なんて何ら特別なことではない、普通のことにしたい。極めて現実的でありふれた選択肢の一つとしたい。そのためにDeNAのキャリアパスに起業を追加し、それだけではなく、DeNA以外にも挑戦魂あふれる方々にも声をかけていくし、すでに挑戦しているスタートアップも、既存のVCの皆さんとともに応援していきたいと思っています」

今回のファンドには、約10年間シリコンバレーに在住し、DeNAの海外展開を担ってきた渡辺大氏も、DeNAを退職して独立したパートナーとして参加するという。これまでDeNAや渡辺氏が培ってきたグローバルのネットワークをフル活用し、さらにDeNAのアセットを注入することで、日本のスタートアップエコシステムを世界トップレベルにしていく。そして、再度日本をイノベーション大国にしていくことを目標に掲げている。

起業したことは自分にとってベストな選択だった

「当然ながら起業には向き不向きがあると思います。でも、DeNAを起業したことはこれまで私が行った意思決定の中で、おそらくベストな選択でした。それはDeNAが大きく発展したこと自体ではなく、その道のりが本当に素晴らしいものだったからです。この経験を多くの人と分かち合うことができるなら、これほど嬉しいことはありません」

今回のファンド設立、そしてベンチャー・ビルダー事業への参入などは、DeNAとしてもチャレンジングな取り組みになるが、その原動力となるのは、こうした起業家としての思いだ。だからこそ、今後投資先に対して自ら経営支援を行うなど、これからのファンドの活動にも気合いが入っている。

「ざくろって言ったけど、最近の都会の若い人は中身見たことないかもね(笑)」

そう笑いながら、足早に次の会議室に向かっていった南場さんの、DeNAでの第二の人生が開幕する。



連載:拝啓、次世代の起業家へ。
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文=戸村光

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