ビジネス

2019.07.30

DeNA「100億円ファンド」設立の真意 南場智子氏インタビュー

南場智子氏


「DeNAの最大の強みは人材の質、層の厚さだと思っています。たとえば新卒採用では、毎年何万人もの学生がエントリーしてくれています。その中でとりわけ挑戦魂に富む人材が採用され、事業の立ち上げや推進にかかわるDeNA流のスキルをみっちりと叩き込まれます」

こうした人材に対して、DeNAでは事業リーダーや、専門領域でのエキスパートといったキャリアパスを用意してきた。しかし、独立して自分の会社で事業を推進したい人や、会社の重点領域以外の事業をやりたい人間も、当然ながら存在する。

その受け皿となるのがベンチャー・ビルダーだ。子会社にて事業を立ち上げ、一定期間以内に外部から資金調達を行い、スピンアウトを行う。しかも、新会社の株式の過半数を創業メンバーや外部投資家が持つために、子会社にもしない。あくまで独立した会社として成長を促すためである。

さらにファンドでは、ベンチャー・ビルダーだけでなく、DeNAが会社として太鼓判を押せる人材であれば、起業する際に会社設立や出資を支援するプログラムも用意するという。

なぜこれほどまでに、DeNAは独立起業に対して寛容にするのだろうか。



ざくろをひっくり返す

その理由について南場さんはこう語る。

「閉じ込めるのではなく、解放する。ざくろをひっくり返すイメージです。ひっくりかえして中のキラキラの宝石のような粒、事業や人材を表出させれば、表面積は増え、事業もおおらかに発展する。そして当然一部の宝石は離れていく。それが外部から来た宝石と一緒になって別の大木を作り、また豊かな実をならせる。そのように考えています」

これまで多くの会社は、人材や事業を外に出すことを前向きに捉えてこなかった。そうしたものを独占することが企業としての強みと考えられてきたからである。

しかし、DeNAはあえて解放することで、事業や人のさらなる成長を期待できると捉えている。それが回りまわって、新たな柱となる事業の発掘や人材の環流など、中長期的にDeNAグループ全体に対してかならずポジティブな影響を与えることを確信しているという。
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文=戸村光

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