カジュアルな挨拶とともに会議室に入ってきたDeNA会長の南場智子氏は、いつも以上にエネルギッシュだ。インタビューの少し前の2019年5月10日、DeNAが100億円のファンドを組成するというプレスリリースが公開され、業界の話題をさらった。
今回、このファンドに対する思いや組成について南場さんに伺った。
100億円ファンド設立のきっかけ
「今回のファンド設立は、DeNAが世界にもっと大きなDelightを届けるための、そして日本を再度イノベーション大国にするための、大きな打ち手だと考えています」
DeNAはゼロイチを生み出すプロフェッショナル集団でもある。社員が提案した新規事業は社内で育てるというのがこれまでのDeNAであった。
しかしながら、これだけ大きな会社規模になると、「DeNAがやるべき事業であるか」「DeNAがやるにしては小ぶりな事業なのではないか」といった議論が生まれやすく、事業化に進まない状況に陥ることもあったようだ。どうすれば次々と大きな事業を生み出せるのか。どうすれば世の中にもっと大きなDelightを届けられるのか。
一方で、これまで約10年間欧米展開に力を注いできたDeNAだが、成功したとは言いがたい。なぜ国内で急成長したDeNAが欧米市場を席巻できず、GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)が日本市場を圧倒しているのか。どうすれば日本のスタートアップは世界で強くなれるのか。
DeNAという日本のIT企業メガベンチャーの会長として、また日本を代表する一人の起業家として、南場さんは課題意識を持っていた。
ベンチャー・ビルダーという答え
そうした中、生み出された解が、VC(ベンチャーキャピタル)ファンドであり「ベンチャー・ビルダー」だった。
ベンチャー・ビルダーとは、次々と新規事業を創出しスピンアウト(独立起業)させていく、VCの新たな形態であり、昨今では欧米を中心にその手法が評価されはじめている。ファンドが自らディール(投資先)を生み出していくことが大きな特徴だ。
ヒントは「人材」にあった。