ビジネス

2019.07.30

「ブランド」と「スケールメリット」 業界の未来を見据えた「両にらみ」戦略

ItalianCreationGroup CEO ジュゼッペ・ディ・ヌッチョ

ブランドとしての「個性」を維持しながら、「スケールメリット」を創出する。相容れないようにも見える戦略をインテリアの世界で両立している、ItalianCreationGroup CEOに話を聞いた。


ファッションではLVMHやケリング、時計ではリシュモンやスウォッチグループなど、ラグジュアリーコングロマリットが結成されているが、そのインテリア版が「ItalianCreationGroup」である。

傘下に収まる主要ブランドは、デザイン家具の名門「ドリアデ」、巨匠デザイナー、ジオ・ポンティが創業した照明ブランド「フォンタナアルテ」、高級キッチンの「ヴァルクッチーネ」、そして美しいバスルームをつくる「トスコクワトロ」。これらの特別な個性を持ったラグジュアリーブランドたちの舵取りを行うのが、グループのCEOを務めるジュゼッペ・ディ・ヌッチョである。

「グループ化のメリットは、大きくは2つあります。空間デザインと一体化したコントラクト事業においては、リビングからキッチン、水回りまでトータルコーディネイトの提案ができます。また一般顧客に向けては、小さなプロモーションであってもグループで行うことで効果は大きくなり、製品への興味を持ってもらえるようになる。個々のブランドのポテンシャルを相互補完するかたちでアピールできるというのは、大きな強みでしょう」


「フォンタナアルテ」は、アイコニックなオブジェ照明が得意。


フィリップ・スタルクら有名デザイナーの作品を数多く発表してきた家具の名門「ドリアデ」。


常に新たなコンセプトのバスルームを提案する「トスコクワトロ」は、ラグジュアリーとクリーンを両立させる。

なぜインテリア業界がグループ化を進めるのか? そこに業界の未来を見たからだ。

「現代のファッションブランドは巨大なグローバル企業ですが、30年前はどれも小さなファミリー企業でしたよね。イタリアのインテリア業界も、小さなファミリー企業が多く、世界の経済事情に簡単に影響を受けてしまいます。だからこそ、ブランドとしての個性は維持しつつも、グループ化することで体幹を太くする必要があるのです」

スケールメリットを生かした大企業の家具が世界を席巻している今、小さなラグジュアリーブランドのグループ化というのは“必然”なのだろう。

インテリア業界は大きく動き始めている。


ジュゼッペ・ディ・ヌッチョ◎複数の人気ファッションブランドでキャリアを積んだのちに、インテリア業界へ転身。2018年3月から、「ItalianCreationGroup」のCEOを務める。

文=篠田哲生 写真=奥山栄一

この記事は 「Forbes JAPAN 新「マネーの法則」を見つけた人々」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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