音楽は誰のもの? 原盤権をめぐりテイラーと旧レーベルが対立

テイラー・スウィフト(Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Amazon)

「アメリカの恋人(America’s sweetheart)」の異名を持ち、史上最年少(20歳)でグラミー賞の最優秀アルバム賞を獲得、以降、同賞を10回も受賞しているシンガーソングライター、テイラー・スウィフトが、所属していたレーベルと権利関係で揉め、互いにSNSで相手を非難している。

テイラーは昨年11月、契約満了をもってビッグ・マシン・レコードからリパブリック・レコードに移籍したのだが、TI Media Limitedによると、揉めたのは、テイラーが移籍に際して「これまでの音楽作品、初期6作品のマスター音源を自分に買い取らせて欲しい」と言っていたにもかかわらず、ビッグ・マシンの社長であるスコット・ボーチェッタがこの約束を守らなかったからだ。

過去の音源の権利を自分のものにするのは、テイラーにとって悲願であった。しかし、今年になって、米音楽業界の大物マネージャーであるスクーター・ブラウンが、ファンドを使って、その旧レーベルを買い取った。これにより、テイラーのビッグ・マシン時代の6作品の原盤権は、ブラウンが持つこととなり、彼女はSNSで「最悪のシナリオ」と呟いている。


スクーター・ブラウン(Getty Images)

レーベルを売った側のボーチェッタは、雇われ社長として会社に残ることになっており、やはりSNSで「テイラー・スウィフトには、新しいCDを当社から発売するなら、過去の原盤権を譲るということをちゃんと言っていた」として、テイラーが約束を果たさず、レーベルを移籍したことを暗に非難している。

権利関係で揉める話は、日本でもよく聞く。しかし、さすがにテイラーほどのビッグネームともなると、全米もこの話題で持ちきりだ。しかも、この話は単なる契約上の問題ではなく、ストリーミング時代、まさに音楽業界の今後の地図が変わるとも見られており、注目されている。

過去にはプリンスも原盤権で対立

このデジタル時代、アーティストはこれまでのようにレーベルに頼らなくても、自分でSNSを使ってマーケティングをして、直接顧客にストリーミングで提供することも可能で、この自由度はアーティストにとって極めて魅力的な創作環境のはずだ。

しかし、レコード会社が原盤権を所有するという契約を結ぶと、売り先、売るタイミングなど、アーティストは自分自身では、どうにも自らの音楽を流通させることができない。

米Forbesによれば、リパブリック・レコードとの新契約では、レーベルは今後、彼女がリリースする楽曲の原盤権を、リリースから5年の間は彼女に持たせる条件を提示したということだ。テイラーは自らのインスタグラムで、「今後の楽曲の全てのマスターを、自分でコントロールできることにエキサイトしている」と発信していた。
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文=長野慶太

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