ビジネス

2019.07.24 07:00

「天才・逸材採用」から1年──ZOZO研究所が見据えるファッションテックの未来


ZOZOの強みはデータ量とビジネスへの出口

──松谷さんは、なぜZOZOグループに入社しようと思ったのでしょうか?

松谷:もともと、東京大学を卒業した後、マサチューセッツ工科大学で航空機への応用を見据えた制御理論の研究を行っていました。

大規模なもの、ダイナミックなものが好きで、博士卒業後はマーケットに興味が移り、前職は外資銀行のニューヨーク本社でストラテジストとしてリスク管理システム、トレーディングの自動化などの研究開発に携わっていました。マーケットの解析などで機械学習の技術を試す中で、他に面白い応用先があるのではないか。その候補として、色々話を聞くなかで浮かんだのがZOZOだったんです。



ZOZOは画像データや購買ログなど、保有しているデータが多い。この膨大なデータを活かすことで、面白いことが見えるのではないか。また、ユーザー体験の向上や売上に貢献できるのではないか、と思い、転職を決めました。

金山:松谷が言った通り、ZOZO研究所の強みは圧倒的なデータ量です。ただ、それだけでなく、最終的な出口が近いことも強みだと思います。ZOZOグループはファッション通販サイト「ZOZOTOWN」やファッションコーディネートアプリ「WEAR」が主要事業なので、研究成果をロールアウトできる場所がある、また、最近はPB(プライベート・ブランド)商品に加え、「MSP(マルチサイズプラットフォーム)」事業も立ち上げ、ブランドとコラボして多サイズ展開も始めます。

企画、調達、製造、流通、消費を喚起させるメディアなど、ファッションに関しては垂直型でどこにでも出口がある。これはZOZOグループにしかない強みだと思います。

松谷:企業の研究所ということで、大学の研究所と異なるのは実際のデータに直にアクセスできること。それとビジネスへの出口がゴールとしてあることです。機械学習の分野は応用ありきだと思っているので、アカデミアに限らず企業の研究所にも大きな可能性があります。ZOZOグループのポテンシャルは蓄積され続けるデータですし、この強みを活かして、ビジネスにつなげていきたいです。

──立ち上げから1年が経ちました。今の状況をどう捉えていますか?

金山:現在のメンバーのバックグラウンドも多様ですし、共同研究の幅も広がっている。ZOZO研究所のフィジビリティ自体も上がっていて、優秀な人からの応募、共同研究の申し入れも増えてきているので、ポテンシャルは高くなってきています。

とはいえ、立ち上がりから1年くらいで急速に成長してきたので、もっと環境を整備していかなければいけないですね。今後はビジネスにつなげるために必要な環境を整えていくことが重要になってきますし、もっとZOZOグループだからこそできる意義のある研究を選定し、取り組んでいきたいと思っています。
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文=新國翔大 写真=小田駿一

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