デバイス背面に搭載されるToF 3Dカメラは再現度が高い3D撮影が可能で、精度の高いAR(拡張現実)アプリの実用化など、大幅なイノベーションをもたらす技術として期待されていた。しかし、アップルは今年の新モデルではなく、2020年発売のiPhoneにこの技術を搭載する見通しだ。
アップルのパートナー企業であるソニーは、2017年にToFセンサーを開発し、このテクノロジーが対象物に光を照射し、その到達速度で距離を測定すると述べていた。ToF 3Dカメラは、5メートル以内の距離のあらゆるオブジェクトを3Dマップ化する能力を持つ。
対照的にアップルが現状のFace ID に採用中の3Dマッピング技術の適用範囲は、最大で50センチまでの距離に限られている。ToF 3DカメラがiPhoneに搭載されれば、先進的なARやVR撮影が可能になり、ユーザーの手の動きを追尾してゲームを操作することも可能になる。
ソニーセミコンダクタソリューションズの吉原賢事業部長は、2018年12月のブルームバーグの取材に、ToFセンサーの量産を2019年から開始すると述べ、「カメラが携帯電話を進化させたように、3D技術が今後のスマートフォンに革新をもたらす」と話していた。
今年のiPhone 11にToF 3Dカメラが搭載されないというのは、非常に残念な報せだ。ソニーは今年の夏にはプロダクトを出荷すると宣言しており、アップルの決定が製造の遅延によるものではないことは明確だ。
アップルが新端末でToF 3Dの採用を見送ったのは、それ以外にも多くの機能がiPhone 11には搭載されないため、この端末が魅力に乏しいものになるからだと報じられている。
一方で、ToF 3Dのテクノロジーは2020年の新型iPhoneのデザインの大刷新に、非常にうまく合致するものになりそうだ。今年のiPhone 11は以前のiPhone Xとほぼ同様なデザインになることが確定的だが、2020のiPhoneは従来のノッチを廃止し、フロントカメラを前面ディスプレイの小さな穴に格納する「パンチホール」ディスプレイが採用されるとの情報もある。https://forbesjapan.com/articles/detail/28397
ここまでの情報を総合すると、今年のiPhone 11は史上最も面白みに欠ける端末になることが確実で、それに続く2020年の新モデルは巨大な進化を遂げた端末になる。アップルが今秋からiPhone 11に関する大々的なプロモーション展開を行うことは確実だが、筆者としては辛抱強く、来年のモデルを待つことをお薦めしたい。