同社の推計時価総額は9億7,000万ドルに上るとみられ(Forbes ASIA)、10億ドルが目安とされるユニコーン企業の仲間入りに王手をかけた形だ。インドで初めての、女性が創業者した「ユニコーン」になる日も近いとされている。
自らの力で道を切り拓く女性たち「SELF MADE WOMEN100」を紹介する連載企画。7月25日発売のForbes JAPAN9月号でも特集するこの企画で、今回は若きアジアの女性起業家、アンキティ・ボーズを起業に駆り立てたパッションについて聞いた。
──「Zilingo」を起業したきっかけを教えてください。
私は、ファッション業界の「歪み」について疑問を持っていました。例えば、製造業者は生産しても十分な利益をあげられず、働き手も基本的な賃金や福利厚生、安全に働く環境が保証されていません。でも、私たちは有名ブランドの服を買うのに高いお金を払っています。それはおかしいですよね。
私たちはテクノロジーと金融を使ったサービスで、ファッション業界のサプライチェーンを変革し、小売業者や工場、生産者を支援しています。インドネシアやインド、バングラディシュやスリランカといった国々の工場で働いている労働者の大半が女性です。彼女たちに安全で最低賃金が保証された仕事を提供することで、より公平で正しい業界にできると考えています。
我々の仕事によって世の中を変え、人々の人生にいいインパクトを与えられる。それが私の仕事に対するパッションになっています。
──Zilingoはどのようなビジネスモデルですか。
小規模の小売業者らを支援するオンライン・マーケットプレイスで、BtoBの事業者同士のやりとりと、BtoCの一般消費者向けの販売ができます。販売管理や分析を行うソフト、自動の流通・決済システムなどを提供し、グローバル市場へのアクセスを手助けしています。金融ローンのサービスや、製造業者にアウトソースできる仕組みもあります。出品は無料で、売上の15%を販売手数料としてもらっています。
契約している小売業者は3万3,000社以上、月間のアクティブ・ユーザーは500万人以上です。オーストラリア、香港、インド、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、アメリカにオフィスがあり、500人以上が働いています。
──このビジネスモデルはどうやって思いついたのでしょうか。
2014年、私は米大手ベンチャー・キャピタル「セコイアキャピタル」のインドの拠点で働いていました。東南アジアに出張する機会も多く、バンコクやジャカルタ、シンガポールなどをよく訪れていました。ファッション産業の商品の多くは、こういった東南アジアや南アジアの国々で作られています。
タイの服飾資材市場で店を見ていると、小規模の小売業者は素晴らしい商品があっても、テクノロジーがないために、世界のマーケットにアクセスできていないことがわかりました。サプライチェーンをデジタル化すれば、彼らにもビジネスチャンスがあると思いました。スタートアップなら彼らにはないテクノロジーと資本を使うことができます。2015年にドゥルーフ・カプア(28歳)と共同で創業しました。