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2019.07.04 16:00

1億ユーロを投資する、アフリカ「オレンジ経済」とは


IFFACは、国連と世界貿易機関の合同機関 、ITC(国際貿易センター)が2008年から取り組んでいる、EFI(エシカル・ファッション・イニシアティブ)と、RACPが2014年から展開しているAFF(アフリカン・ファッション・ファンド)との共同プロジェクト。ブランドの途上国での製品開発と生産を推進するEFIは、ステラ・マッカートニー、ユナイテッド・アローズなど、世界の主要ブランドと途上国の作り手との連携を実現させてきた。

AFFは女性起業家が手がけるアフリカのファッションブランドに特化し、設立以後、すでに500万ユーロを投資している。AFFは助成金の提供のほか、ニューヨークのファッションブランドでのインターンシップ機会や専門家によるメンターシップなどの機会を提供することで、デザイナーを支援してきた。

IFFACはAFFと違いクリエイティブ全般を対象としているが、ファッションなど製品関連は重点分野。まもなくアフリカ大陸自由貿易圏が発効。アフリカ連合全加盟国参加で域内人口12億人、総生産2兆5千億ドルの市場誕生を見込、ものづくり産業の活性化が期待される。

ものづくりはアフリカン・ルネサンス(African Renaissance)の具現化でもある。アフリカ人自身が自分たちの文化を再構築し、発信するというムーヴメントのことだ。今アフリカでは若者を中心に、それぞれの「アフリカ」と取り戻し、誇りを持ち、そのカルチャーや価値観を表現し、世界に発信していこうという動きが活発化している。アフリカを発信したいという想いが創造性を後押ししているとアナン。奪われてきた文化への誇りを取り戻しつつあるアフリカ。ファッションやアートは若者らの自己表現の延長線上にある。

オレンジ経済を促進の動きは東アフリカにもある。2012年からケニア・ナイロビを拠点に活動するThe Nest Collective(ザ・ネスト・コレクティブ)は、映像、音楽、写真、ファッション、ヴィジュアルアートなど多岐に渡るプロジェクトを手がけるクリエイティヴ集団。彼らは2015年にクリエイティブ業界をさらに活性化するためのHEVAファンドを立ち上げた。HEVAは現在、文化遺産を取り入れたプロジェクトを支援するシードファンド、女性起業家に特化したシードファンド、スケールアップに特化したファンドの3種類のファンドを展開する。HEVAの代表、ジョージ・ガチャラ(George Gachara)によると、現在ファンドの約6割はファッションブランドへの投資だが、音楽、映画、ゲームなども対象だ。女性起業家に特化したファンドを立ち上げたのは、過去の経験から女性起業家の方が、ファンドの回収率が高いからだという。
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文=ナカタマキ

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