ビジネス

2019.07.02

エンタメで世界を獲りに行きたいアカツキが、いま「インド投資」に夢中な理由

AET Fund インド責任者の河村悠生


スマホを使えるインフラが急ピッチで整えられた


Getty images

まず、その背景から整理しよう。

「日々成長するインドの変化を肌で感じる」という河村は、インドにおけるモバイルエンタメ市場が急成長している背景に、次の3つの大きな変化があると分析する。

「1つめは、格安スマホの出現です。スマホは13億人のうちの上位数パーセントしか持つことができない高価なものでした。しかしいまでは、100ドル未満で買えるアンドロイド系中華製端末が登場したことが大きい。

2つ目は、4G通信網の急速な普及です。インド大手財閥リライアンスグループ傘下の大手キャリア『JIO(ジオ)』が4G通信の価格破壊を起こしたことで、月額1万円近かったスマートフォン利用料が数百円に。インド全域で実質無制限に4Gが使えるようになったのです。

そして3つ目が、モバイル決済システムの普及ですね。インドは国を挙げて個人認証や決済システムを進めていて、都市のほとんどの店でモバイル決済が可能。日本よりもずっと進んでいる印象です。以上のような環境が整い、スマートフォンはインドの庶民にとっても、なくてはならないデバイスとなりました」。

スマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)やVivo(ヴィーヴォ)、Samsung(サムソン)などが、インド市場向けにこぞって低価格製品を投入し、シェアを拡大。それに加えて、2016年には、インドの資産家ムケシュ・アンバニが、4G通信サービスの「Reliance Jio」(リライアンス・ジオ)を開始した。同年中は無料で開放し、以降は月額149ルピー(約230円)と破格で提供。これによってインターネットの人口カバー率は90%を超え、地方や貧困地域まで一気に高速インターネット網が普及した。

また、2014年ごろから、ナレンドラ・モディ首相が「デジタル・インディア」という政策を掲げ、政府予算だけで総額1.13兆ルピー(約2兆円)を投じて、全国にブロードバンドを整備。大学や教育機関などに無線LANを整備させたり、行政サービスの電子化を進めたり、個人認証と決済を連携させるプラットフォームを作ったりと、国を挙げたデジタル化が成し遂げられつつある。

こうした環境が整ったことで、インドのスマホユーザーは3億7000万人を超え、日常的にスマホでゲームや動画を楽しんだり、買い物をしたり、SNSを投稿したりする人が一気に増えた。モバイルエンタメ市場が爆発的に盛り上がる土壌が数年の間に急ピッチで整ったというわけだ。
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文=松崎美和子 写真=大本賢児

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