「自分の国籍を誇りに思う」 逆境を乗り越え続けた、ある北朝鮮代表の告白

安英学(アンヨンハ)


──日本を中心に様々な国でプレーされたかと思います。引退後どのような生活を送っているのでしょうか?

今はサッカースクールを2つ経営しています。大好きなサッカーを通じて子どもたちをサポートしたいという思いが現役時代からありました。

2013年、現役でプレーしていた際に1つめを立ち上げました。現役といっても浪人生活中で、ヨーロッパと日本を行ったり来たりしていた頃です。合間を縫って日本にいる間に、なんとかスクールを開くことができました。

あとは母校である立正大学のサッカー部アドバイザーとOB会会長として微力ながらサッカー部のサポートをしています。僕を成長させてくれた立正大学サッカー部に少しずつでも恩返しをしていきたいです。



在日でなければ感じられなかった、日本人からの温かさ


朝鮮籍を持って生まれた僕にとって、良かった部分は数え切れないくらいあります。在日として生まれてきたからこそ、より人の痛みを知ることができると思います。おかげで人のありがたみも人一倍感じることができます。

新潟のサポーターや所属していたクラブのサポーターは、僕のバックグラウンドなんて関係なしに熱く応援してくれました。日本の方からの温かみも、在日でなければ感じられなかったことです。

朝鮮学校で学んだからといって、朝鮮のすべてが盲目的に全部正しいとは思わないです。後輩たちには朝鮮・韓国・日本の狭間で生きてきた在日のフラットな視点を活かして、自分の好きなものや得意なものを見つけて自分にしかできないことをしてほしいです。自分の人生に胸を張って、幸せに生きてほしいです。

──最後に安英学さんの目標を教えていただければと

ひとつはサッカーを通じて「今まで知らなかったこと」や「見えなかったこと」を繋げたいです。これは多くの国々を繋げることでもあります。朝鮮・韓国・日本は自分のルーツがある国なのでもちろん、他のアジアの国々もサッカーを通じて仲間になっていけたらいいなと思います。

昨年ロンドンで、FIFAに加盟できない未承認国家や民族、地域の代表チームが集まった世界大会が開かれました。自分たちのアイデンティティをサッカーを通じて証明しようとしている人たちを見て、世界には知らないことがたくさんあるなと改めて実感しました。

ふたつめは自分のように夢を叶えてW杯でプレーする選手を見たいです。統一コリアの代表選手の一員としてW杯に出場する選手や、自分を超えてくれる選手を育てるのが僕の役目だと思っています。世界で活躍して誰からも応援される選手を育てたいですね。

みんなの夢を信じて応援してあげたいです。

文=裵麗善(ぺ・リョソン) 写真=小田駿一

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