米医学誌「JAMAインターナル・メディシン」に発表された研究結果によると、睡眠中の人工光への暴露(テレビや夜用ライトの光に当たること)と体重の増加には、関連性があるとみられる。
米国立衛生研究所(NIH)の下部機関である国立環境健康科学研究所(NIES)のチームが発表した論文は、2003年7月~2009年3月まで実施された調査に参加した35~74歳の女性4万3722人に関するデータの分析結果をまとめたものだ。
研究チームは調査開始時に体重測定と睡眠環境に関するアンケート調査を実施。眠っているときに当たっている光の量に基づき(全くない、小さな夜用ライト、部屋の外の明かりを点灯、電灯またはテレビをつけている)、参加者を4つのグループに分けた。その後、2~3年ごとに再度アンケート調査を実施。平均5.7年にわたって追跡調査を行った。
分析の結果、睡眠中に人工光に当たっていた人はそうでなかった人たちと比べ、5㎏以上体重が増加する可能性が17%高く、BMI(体格指数)が少なくとも10%上昇する可能性が13%高くなっていたことが分かった。
懸念されること
人工光は、私たちが気づきもしないような形で、私たちの睡眠を妨げているのかもしれない。光に当たっている状態で眠っているとき、私たちの睡眠は思っているほど深くも持続的でもない可能性がある。そして、それが代謝作用や空腹感に影響を与えているとも考えられる。
安眠できていないことがストレスホルモンの分泌を促し、それによって代謝作用に変化が生じ、体重が増加している可能性もある。また、質の悪い睡眠は精神的健康にも影響を与え得ることから、それが原因となって食事の仕方に変化が及んでいるのかもしれない。
もちろん、この研究結果は関連性を明らかにしたものであり、因果関係を確認したものではない。結果の背景にどのようなメカニズムがあるのかをより明確にするには、さらなる研究が必要だ。
だが、いずれにしてもこの結果は、肥満が体の複雑なシステムの問題であることを示す新たな証拠だ。肥満は生物的、行動的、社会的、またはその他のシステムが混乱していることの結果なのだ。
睡眠環境に注意
この研究結果は、睡眠の質が私たちの心身の健康にさまざまな形で影響を及ぼしていることを改めて示したものでもある。睡眠衛生の重要性を無視してはいけない。
米国立睡眠財団は「夜間の質の高い睡眠と昼間の高い覚醒レベルのために必要な習慣」として、私たちが実行すべきことを紹介している。そうした習慣の中には、「睡眠中には寝室を十分に暗くしておくこと」が含まれている。
部屋を暗くするためには、以下を確認しておく必要もあるだろう。
・カーテンやブラインドが「遮光」タイプである
・カーテンやブラインドのサイズは窓に合っている
・ブラインドは「完全に」閉じる
・寝室の外の明かりを消す(隙間から光が部屋に入ってこないようにする)
・寝室にある電化製品などのコンセントを抜く
・テレビを見るときはタイマーをかける