ウォルマートが米国内の店舗と傘下の会員制スーパーマーケット、サムズクラブで働く150万人以上を対象に、大学の学費を補助する制度を導入すると発表してからおよそ1年。同社はこのほど、その制度を拡大し、高校生にも「労働市場との架け橋」を提供することを明らかにした。
対象とするのは、米国内のウォルマート店舗のほか、本社、サプライチェーン、サムズクラブで働く従業員。制度の利用者は毎日1ドルを拠出し、ウォルマートは大学の学位取得に必要となる費用を全額負担する。授業料のほか、書籍の購入代金やその他の手数料なども支払い、従業員が負債を抱えることなく学位を取得することを支援する。
高校を卒業してすぐにフルタイムで働く若者が減少していることから、ウォルマートは高校生の従業員を労働力として確保し、次世代のリーダーに育成することにつなげたい考えだ。
制度について
ウォルマートの従業員は、少なくとも90日間勤務すれば、この制度の利用を申請することができる。同社は全ての申請を承認する方針だ。また、学位の取得前に退職した場合も、ウォルマートが支払った費用を返済する必要はない(ただし、その後の補助はなくなる)。
同制度の導入以来、米国の50州の店舗で働く7500人以上が制度の利用を申請し、大学で学び始めている。ウォルマートは、導入から5年後までに6万人以上がこのプログラムを利用すると見込んでいる。
同社は当初、「従業員の現在と未来の成功に向けた準備を支援するための幅広いアプローチの一環」として、経営またはサプライチェーン・マネジメントの学士か準学士課程を支援の対象としていた。
だが、拡大後の制度の下では新たに、サイバーセキュリティーやコンピューターサイエンス、ネットワークセキュリティー、コンピューティング技術など、その他14の学位や資格の取得が可能なコースを対象に含めた。
制度の利用者には、ウォルマートと提携する教育プラットフォームの米ギルド・エデュケーションが、進路の選択から入学許可の申請までに関するカウンセリングを提供する。
米国の「学生ローン危機」
学費に関して従業員を支援している米企業は、ウォルマート以外にもある。金融大手フィデリティや、会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、医療保険会社エトナ、出版大手ペンギン・ランダムハウスなど、多くの企業が従業員の学生ローンの返済を支援している。
学生ローンに関する最新の統計によれば、米国では4400万人以上が総額1兆5000億ドル(約162兆4900億円)以上の学生ローンを抱えている。
個人向け金融サイトの米メイク・レモネードによると、米国の消費者が負う借金のうち、2番目に多いのが学生ローンだ(最多は住宅ローン)。学生ローンの返済は、多くの米国人が卒業後に直面する最大の課題の一つとなっている。