フォーブス ジャパン編集部のキュレーター兼編集者


──そして、テルアビブの街でも実験走行している「自動運転車」。16年に開発を始め、17年12月に早くも実証実験を行っています。

いま、私にとって最も可能性が感じられるのが自動運転車。あまりにも多くの領域の高度なテクノロジーが含まれているからです。私たちのように、ロシアやアメリカ、イスラエルといった国々の公道で実証実験をしている企業はほとんどいません。コンピュータ・ビジョン、機械学習、地図アプリ……私たちにその技術があるからこそ、他社製品と組み合わせながらも、こんなに早くも公道を走れるプロトタイプ(試作品)を製造できたのです。

何もゼロから作ったわけではありません。インフラは最初からあったのです。各部署にいた開発者たちを選び、彼らに新たな任務を与え、もともと存在した製品を皆で組み合わせただけ。もちろん、すべきことはごまんとありましたが、ほぼ2年で終わりました。5〜10年は時間を節約できたのではないでしょうか。

──将来的なビジネス化の目処も立っている、と。

我々の準備はもう整っています。すでに増産体制に入っており、今年は100台以上が公道を走る予定です。これはごく自然の成り行きですね。なにせ、私たちには地域最大のユーザー数を誇る配車アプリ「ヤンデックス ・タクシー」があります。仮に、そのクルマをすべて自動化できたらどうでしょう? これは巨大な商圏になります。なので、まずは自分たちのために自動運転車を開発しています。次に、提携している韓国のヒュンダイ・モービスといったパートナーと、他の自動車メーカーに自動運転車キットを販売できれば、と。そのときは、世界で最も優れた自動車を製造する日本のメーカーと提携できるといいですね。少なくともそう望んでいます。


極寒のロシアから酷暑のイスラエルまで、ヤンデックスの自動運転車は幅広いデータを収集している  写真 = ヤンデックス

──すべてとは言わないまでも、多くのIT企業が秘密主義を徹底するなか、ヤンデックスは自動運転車の開発過程を公開しながら他社とも協働しています。これには独自の哲学があるのでしょうか。

ことビッグデータと機械学習を中心に展開しているIT企業は、割と開かれた社風にあると思います。それは、機械学習そのものが科学であり、アカデミアの議論や学術論文をもとに築かれた分野だからです。日々、新しい手法に関する論文が発表されていますが、エンジニアはそれをアイデアとして製品に組み入れることができます。この領域では誕生した当初からそうで、いまでも機械学習の文化はオープンで、異なる企業の関係者が話し合っています。おそらく他の業種よりも積極的に交流しているのではなないでしょうか。NIPSをはじめとした機械学習のトップカンファレンスでは、教育機関はもちろんのこと、グーグルやマイクロソフト、アップル、アマゾン、ヤンデックス、バイドゥの企業関係者も積極的に意見交換をしています。

文=井関庸介 写真=ジョナサン・ブルーム

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