元新聞記者のダイバーシティ・レポート


全寮制・音楽漬けの毎日

少年合唱団は、団員になれる年齢が限定されていて、独特の教育法が知られます。ウィーン近郊にあるアウガルテン宮殿が本拠地で、オーディションを受け、全寮制の私立学校に10歳で入学します。コーラスや個人レッスンが毎日あり、音楽漬けの毎日を送っています。

先生は、少年たちの体調や、やる気を注意深く見ています。ブルックナー組のカニン先生は、来日記者会見で、団員とアイコンタクトを取りながら優しく見守っていました。そこで披露された合唱のまとまりや、少年たちの表情から、信頼関係が伺えました。カニン先生は、ブルックナー組の特徴について、「他の組よりも、サッカーが得意」とユーモアあふれる紹介をしていました。

日本人の団員も「先生になりたい」

ブルックナー組には今、日本人のケント君(11)がいます。少年合唱団のコンサートに行って好きになり、オーディションを受けて全寮制の学校生活に飛び込みました。

筆者は、オーストリアでオペラを見たり、ドイツで取材したりした経験から、ドイツ語の難しさがよくわかります。記者会見で、ケント君に「ドイツ語はどのように覚えましたか?今はみなさんとドイツ語でコミュニケーションをとっていますか」と質問してみました。

ケント君は「日本にいる時は、ドイツ語をあまり習っていなくて、こちらの小学校で習いました。これからもみんなと一緒に話して、覚えていきたいと思います」と話してくれました。将来は、音楽の先生になりたいそうです。


記者会見で、筆者の質問に答えるケント君 (c)居坂浩文

学校新設、音楽を続ける道

近年、団員たちに、キャリア継続の道も開かれました。

2010年2月12日の朝日新聞によると、入団希望者がピークだった1950〜60年代には約30人の募集枠に500人以上が殺到しましたが、希望者は減り続け、競争率は最近は2〜3倍に。優秀でも、14歳で卒業するか、変声期を迎えると親元に戻される伝統で、音楽の仕事に就く団員は2割程度でした。

こうした事態を受け合唱団は、退団者が学べる上級校を新設しました。具体的には「一般課程のカリキュラムに加え、毎日2時間の声楽レッスン、音感を磨く耳のトレーニング、地元の音楽大学と連携した楽器演奏の授業などを設ける。学費は月340ユーロ(約4万1800円)。卒業試験に合格すれば、音大に入る際の実技試験が免除される」とのことです 。

少年合唱団の芸術監督・ヴィルトさんは、記者会見で「教育的な側面で、合唱は大事な意味を持つ。海外公演に行くと、人間的にも成長する。彼らはアーティスト、教育者として活動を続け、合唱団の魂が受け継がれていくでしょう」と語りました。

連載:元新聞記者のダイバーシティ・レポート
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文=なかのかおり

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