グローバルに活躍できるプロフェッショナルやエグゼクティブクラスの人材ともなれば、ヘッドハンターたちがこぞって、あの手この手でアプローチしてくるだろう。
「グローバルで活躍するバイリンガル人材を求めているのは、これまで外資系企業だけだったかもしれません。けれどもここ数年、日系企業においても同様の人材が求められており、“人材の奪い合い”が起こっています。日本で今、ここ50年で最大の“人材危機”が起こっていると言えるかもしれません」。
そう話すのは、ロバート・ウォルターズ・ジャパンで代表取締役を務めるジェレミー・サンプソンだ。オーストラリア出身。大手ホテルチェーンで日系企業を対象としたインサイドセールスを経験した後、来日。2006年にロバート・ウォルターズへ入社し、2018年に代表取締役に就任した。
異業種からの転職、僅か13年で社長就任と、いわゆる外資系ならではのスピード感には驚くばかりだが、実は同社には“ジャパンらしさ”がいくつも眠っていた。いや、もしかすると日本以上に日本の良さを体現しているのかもしれない。
外資系のようで外資系でない。“チームありき”の組織のナゾ
まずはロバート・ウォルターズを少し紹介しよう。1985年にイギリス・ロンドンで創業した人材紹介会社で、世界30カ国でビジネスを展開している。日本国内でも外資系人材紹介会社としては最大級の規模を誇る。外資系の日本法人、国内企業の海外事業などのグローバルビジネスを担うプロフェッショナルの転職を支援する会社だ。
8年連続で売上高は二桁伸長し、15、16年には2年連続でリクルートメントインターナショナルアジアアワード「最優秀インターナショナル・リクルートメント企業」を受賞するなど、人材業界における最注目企業といっても過言ではない。
「成長企業」「外資系」
この2つの要素が並ぶだけで、少なくない読者が「圧倒的な個人主義であり成果主義」というイメージを持つだろう。率直に実態について問いかけた。するとサンプソンは笑いながら首を振る。
「ロバート・ウォルターズで特徴的なのは、報酬が個人のコミッション(歩合)制ではなく、チームプロフィットシェア、つまり“チーム内で報酬を分け合う”仕組みとなっていることです。各チームに数値目標が紐づけられ、それを達成すれば、チームメンバーにボーナスが付与される仕組みです。つまりチームありきなのです」
詳細を聞くと、個人の貢献度合いも加味して各メンバーに配分されるため、チームとしての協力や団結を醸成しながら、個人としてのパフォーマンスも評価されると言う。
実際、人材紹介業界では“生き馬の目を抜く”ようなビジネスで、「無理に求職者へ転職を勧める」やり方も残念ながら存在している。そんな本質的ではない仕事に限界を感じ、引き抜きではなく自身の意思で同社へ転職を希望する人間も多いのだとか。
「チームで協力し合い、クライアントや求職者にとって最良となる提案ができるからこそ、社員からのフィードバックサーベイでも高い評価を得ているのだと思いますね。2019年にはGreat Place To Work『働きがいのある会社』中規模部門ベストカンパニーを受賞したのも、チームありきの組織運営だからこそと感じています」
真のダイバーシティは適切な評価制度で叶う
サンプソン自身もそうだったように、実は異業種、異分野からの登用も少なくないロバート・ウォルターズ。また、即戦力を求める外資系企業としては珍しく、新卒採用やポテンシャル採用にも積極的だ。
なぜそれができるのか。なぜ、ゼロから人材のプロになれるのか。その答えは独自のインダクション(新入社員向けの導入)トレーニングプログラムにあるとサンプソンは話す。
「座学研修やロールプレイング、シャドーイングや実地研修、OJTなど3カ月に渡る多角的なプログラムを実施しています。多くの企業がOJT中心だと思いますが、かなり研修に投資しているのが弊社の特徴かもしれません。また、先輩社員の中からメンターを自身で選び、コーチングを受けるメンターシッププログラムも設けていますね」
ちなみにロバート・ウォルターズ・ジャパンには約300名の従業員が在籍し、そのうち日本人は半数ほど。従業員の出身国は40カ国にも上り、女性の管理職比率も30パーセント以上と、真にダイバーシティな組織体制となっている。
「昨今、ダイバーシティが国内でも世の中でホットなワードとされていますが、何か特別なことをしたわけではありません。パフォーマンスに基づき、適切に採用と組織編成を行い、成果を挙げた人を評価していった結果、ダイバーシティな環境が生まれたのです。
多様性は、偏ったものの見方を変え、狭い視野を拡げ、まったく異なる観点から、よりクリエイティブなアイデアやマインドをもたらしてくれます。ただ、それを許容しているだけなのです。優秀な人に『この会社で働きたい』と思ってもらえますし、ダイバーシティな組織を作るのは極めて合理的なことなのです」
今の仕事に意義はあるか? 意義があれば、幸せに働けるはずだ
最後にサンプソンに、日本人のこれからのキャリアについて意見を求めた。
外務省が発表する「海外進出日系企業実態調査」によると、2017年10月1日時点で海外に進出している日系企業の総数は7万5,531拠点で、過去最多を更新。同じく外務省「海外在留邦人実態調査」でも海外に在留する邦人総数は135万1,970人となり、こちらも過去最多を更新している。
国内では労働者人口減少が見込まれ、市場規模も縮小。企業レベルでも個人レベルでも、世界へ活路を見出そうとするのも必然的な流れだ。「やはり高レベルの英語力が求められるのか?」とサンプソンに尋ねた。すると、グローバルに活躍できる人材には英語力が必要なのは確かだが、必ずしもそれが最優先事項ではないという。
「もっとも重要なのは、転職を希望される方々がそれまで培ってきた経験に基づいたスキルセットです。だからこそ私たちは、キャリアコンサルタントにも相応の専門知識を求めています。素晴らしい候補者の方々と企業を結びつけ、その人がさらに成長できるような環境を用意すること。そしてその人が会社でHappyに過ごせることが私の願いです」
“Happy”
成果主義のイメージも強い外資系企業でこの言葉が出てくるのは意外な気もする。そもそも、働くことと幸福感がなかなか結びつかない人も多いだろう。働く以上、厳しい判断を下すこともあれば、無理難題を突きつけられることもある。「幸せに働く」には果たしてどうすればいいのだろうか。そんな問いかけにサンプソンは、少し微笑み、ゆっくりと言葉を選びながらこう答えた。
「日本だけでなく、私の母国であるオーストラリアでも『仕事に行きたくない』と考える人は多いでしょう。自分の仕事にどんな意義があるか、疑問を持つ人もいる。『働くことが楽しい』と思えるためには、やはり“Purpose(存在意義)”が必要です。
日本において人材紹介に関わることは、人材不足にあえぐ国を助け、クライアントを助け、求職者に対しては労働環境を変え、収入的にもプラスの貢献ができる。一人ひとりの人生をいい方向へ変えることができるのです。それが、私たちにとって大きなやりがいにつながっています。私はそんな会社で働くことができて、本当にLuckyな人間です」
異業種から人材紹介業界へ、そしてオーストラリアから日本へと、まったく未知の世界に飛び込み、アソシエイト・コンサルタントから代表取締役まで上り詰めた自身のキャリアを“Lucky”と表現するサンプソン。
あまりに謙虚な姿勢だが、その“Lucky”をわずかでも掴むためにはどうすればいいのか。
「我々の会社にはリーダーシップ・プリンシプルという、17項目の行動指針が存在します。前述のPurposeを叶えるために欠かせない姿勢と行動を挙げていますが、その中に“Be Positive; Have Fun”という言葉があります。やはりポジティブなマインドで楽しんで、誠実な良い仕事をすれば、おのずと“Lucky”はやって来る。自分自身がその幸運を作るのです。仕事における存在意義は、もちろん企業が提示するのも重要ですが、自分自身で見出さなければならないものだと思います」
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