写真撮影を頼むと、紳士は、一緒に食事をしていたインドネシア人の女性に、「ソフィー、今日は私の髪をセットしてくれたかい?」と冗談を飛ばしながら、カメラのレンズに向かう。
この男性こそ、オットー・シュロワツカさん、このリゾートの創始者だ。
「ユーモアと人間らしさというのは、私がとても大切にしていること。危機的な状況も、いつもそうやって乗り切ってきた。私は、いま流行りの電話やメールなどで連絡するのは好きではない。実際に足を運んでその場所に行って、相手の顔を見て話すのがいちばん。そうやって現場に立っているのが、もっとも物事がうまくいくと思っている」
こう語るシュロワツカさん、リゾート内に住み、毎朝7時〜8時に朝食を摂るのは、食事のクオリティチェックも兼ねている。厨房や客席を見て回り、問題がないかを調べ、そして自分もそこで朝食を食べる。
オーナーも住む理想のリゾート
ヴァイスロイ・バリは、ウブドのラグジュアリーリゾートとしては先駆け的存在だが、シュロワツカさん自身は、元々、リゾートビジネスの業界にいたわけではない。プロのスキーヤーとして、またコーチとして、世界各地を飛び回っていた。
その時代もラグジュアリーなホテルや食事を愛していたが、2002年、親族の紹介で初めて訪れたこのウブドにひと目惚れして、まだ周囲に何もなかったこの地に、「自分の理想のリゾートを実現したい」と考え、つくったのがこのヴァイスロイ・バリだった。
自分の理想のリゾートだから、自分もそこに住む。当然のことなのだ。経営者であり、住人でもある。そんなリアリティに満ちたラグジュアリーリゾートだ。
Photo by James D. Morgan
建設のための資金は、すべて自己資本で賄ったという。最初は11棟だったヴィラも少しずつ増やし、いまでは25棟。現在、さらに15棟の増築を計画している。
リゾートの従業員たちは、シュロワツカさんのことを「パク(お父さんや年長の男性という意味)」と呼んで慕う。
私がバギーで朝食に向かう途中、従業員のドライバーが「昨夜の(シグネチャーレストランの)『アペリティフ』のディナーはどうだった? いま、トリップアドバイザーで1位なんだ。とても誇らしいよ」と話しかけてきた。
それは、誰かに言われてPRしなくてはという義務感からではなく、自分の大好きな場所が、こうして評価されていて本当に嬉しいという気持ちから、自然に出てきた言葉のようだった。