こういった共同作業で、アペリティフのメニューを構成しており、他のチームのスタッフも同じように関わっている。自分の仕込みが終わったら、提案用の料理をつくることもできる。こういったコミュニケーションから生まれた料理もメニューにはあり、ローカルフレーバーのソースなどにも、スタッフがつくったものが取り入れられているという。
アペリティフは新しいレストランだけに、多くのスタッフは新しく採用した人たちだが、過去にヴァンダーヴィーケンさんが指揮を執っていたオールデイダイニングのカスケードも、8割ほどが5年以上働いている顔ぶれなのだという。
周りの力を生かすチーム作り
多くのスタッフが長く働く秘密は、ヴァンダーヴィーケンさんと話しているなかでも感じられた。
インタビュー中に料理について尋ねると、その担当のスタッフを呼んで、「いま君について話していたんだ。どんなふうにつくっているか説明して」と紹介する。農園の案内も、担当のスタッフに案内を任せ、自分はそのサポートに回る。「自分が、自分が」というのではなく、そういった、若手スタッフひとりひとりを表に立たせる姿勢というのが、スタッフのモチベーションにもつながっている。
スキーで、世界トップレベルのチームを率いてきたオーナーのシュロワツカさんは、「人」の大切さをよく知っており、ヴァンダーヴィーケンさんも同じマインドを持っていると感じた。
最近リゾートで耳にするようになったのが、スモールラグジュアリーという言葉だが、インターネットの発達で、誰もが知る大手のブランドだけでなく、小さくて魅力のあるホテルが選ばれるようになってきている。
Photo by James D. Morgan
人の手によるあたたかみ。それが新しいラグジュアリーになっているのかもしれない。共に働く人を大切にする経営、だからこそゲストも大切にする。そこにある「大きな家族としての一体感」が、このヴァイスロイ・バリの、ラグジュアリーの最大の魅力だと感じた。