暗いシーンに対する不満や、画面に映り込んだコーヒーカップなどの失態についての話題はそのうち消えるだろうが、すぐに消えそうにないのは、同番組が世界各地で生んだ観光ブームだ。私は先月、スペインでその盛り上がりを直に体験してきた。
私は4月にスペインを訪れる前、ある友人からガステルガチェという美しい島にある教会を訪れてはどうかと提案された。長く曲がりくねった土手道で本土とつながれたこの島は、スペイン北部中央の海岸沿い、バスク地方のビスケー湾にある。私たちは1時間ほど離れたビルバオに滞在しており、車があったため島までドライブすることにした。
私はGoTをたまにしか見ておらず、ガステルガチェがそのロケ地だったことは知らなかった。しかもそこは、デナーリス・ターガリエンの祖先が本拠地としていたドラゴンストーン島のロケ地だった。エミリア・クラーク演じる“ドラゴンの母”ことデナーリスは、同番組の最重要人物とも言えるキャラクターだ。ガステルガチェ島には10世紀に洗礼者ヨハネのため作られた教会があるが、デナーリスの城はCGで作られたもので、実際には存在しない。
ロサンゼルスに30年ほど住んでいる私にとって映画やドラマのロケ地は見慣れたものだが、ガステルガチェにはそんな私でもほとんど見たことがないほどの人だかりができていた。島に向かう唯一の道はむやみに止められた車であふれており、駐車場までの道は工事のため車は進入禁止になっていた。
閉鎖されていた駐車場までの2キロメートル弱を歩き切ると、新たに作られたキオスクの警備員が私たちの名前をリストで確認し、教会へ向かう許可をくれた。15度の傾斜がある道を歩き始めた私たちだったが、体を痛めてしまったために土手道を最後まで歩くことができなかった。町で唯一のカフェに戻ったところ、そこは食事やトイレ使用のために列を成す旅行客であふれ返っていた。私たちは車に乗り、車同士がこすれそうな大渋滞をなんとか抜けてその場を脱出した。
良くも悪くも、GoTを巡る観光ブームは終わりそうにない。同番組は万人向けではないかもしれないが、170カ国で放送されている。最終シーズンの視聴者数は第1話で1700万人以上に上り、19日の最終話ではさらに数百万人増えた。
これには、隠れた視聴者の数は入っていない。海賊版の監視企業ムソー(MUSO)によると、今シーズンの第1話は5400万人以上が違法に視聴した。こうした視聴者の多く(特にミレニアル世代)は、番組の素晴らしいロケ地を見てみたいと考えている。