ビジネス

2019.05.27

「雲を透視する」衛星スタートアップICEYE、韓国で画像提供へ

アイサイが製造する人工衛星

フィンランドの衛星スタートアップ「アイサイ(ICEYE)」が、アジア市場への進出を宣言した。アイサイが製造する人工衛星は、従来の衛星画像データとは異なる合成開口レーダー(SAR)を用いた画像を生成する。

SARは、人工衛星や航空機にレーダーを搭載して飛行させることで、軌道を直径とする仮想の巨大レーダーを実現するものだ。その画像は解像度が高く、自ら電波を照射して観測しているため、雲があっても撮影が可能だ。

アイサイは5月15日、韓国に本拠を置くAsia Pacific Satellite Inc(APSI)と覚書を締結し、SARデータを韓国市場に提供していくと発表した。同社CEOのRafal Modrzewskiはフォーブスの取材に、「現状のペースが続けば、アイサイは世界のSAR衛星データ市場の大半を握ることになる」と述べた。

「アイサイは世界で最も信頼度の高い、SARデータを提供できる。天候に左右されず衛星画像が入手できる当社のサービスは、企業や政府の日常のオペレーションに大いに役立つものだ」とModrzewskiは話した。

アイサイの設立は2012年。フィンランドのアールト大学の学生だったModrzewskiと、Pekka Laurilaらが立ち上げた。2人は2018年のフォーブスの「30アンダー30」の欧州版に選ばれている。同社はフィンランド政府やEUの支援も受け、2018年1月に最初の衛星を打ち上げた。

衛星分野では「SpaceX」や「Rocket Lab」らの参入が相次ぎ、衛星の打ち上げコストが下がり、競争環境は激化している。しかし、ほとんどの企業の衛星は従来の光学衛星であり、アイサイのようなSAR衛星のスタートアップは稀な存在だ。

そのため、アイサイは「欧州宇宙機関(ESA)」や「Ursa」(同社はエネルギー開発企業にデータを提供している)などの大手と契約を結ぶことに成功した。

アイサイは先日のシリーズBラウンドで6500万ドルを調達した。2年前に30人だった同社のチームは現在、約100人まで膨らんだ。今後の成長を見据え、さらに30人を採用する計画という。

今回の契約は韓国市場に特化したものだが、Modrzewskiによると世界のSARデータ市場で重要な役割を果たすのは米国だという。アイサイは韓国での取り組みをモデルケースとして、世界の顧客に向けたマーケティング活動を行っていく。

2019年1月にアイサイは、サンフランシスコ本拠の衛星スタートアップ「Spire」と共同で、公海上の違法漁業や海賊行為を追跡し、政府やNGOによる取り締まりを支援すると発表していた。

編集=上田裕資

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