福建省の厦門(アモイ)本拠のラッキンコーヒーは、米国預託株式(ADS)3300万株を、1株17ドルで売却した。仮条件は15〜17ドルだったが、その上限での売却となった。上場後の発行済み株数に基づくと時価総額は39億ドルを超え、4月の資金調達の際の評価額29億ドルから30%以上の上昇となった。
しかし、創業2年の同社が収益化を果たせるかという懸念は残る。ラッキンは熾烈な競争の中で、大幅な値引きを行い、恐るべき勢いで資金を燃焼させ続けている。SEC(米証券取引委員会)への提出書類で、2018年の同社の売上は1億2500万ドル、損失は2億4100万ドル(約265億円)とされた。
「投資家らは当座のところは同社の成長ぶりに注目し、興奮状態にある」と上海のコンサル企業チャイナ・マーケット・リサーチ(CMR)のBen Cavenderは話す。「ただし、現在のペースで資金の燃焼が続けば、黒字化は難しい」
ラッキンの膨大な支出の原因は、大幅な値引きにある。スターバックスから客を奪うため、同社は「1杯買えば2杯が無料」といった販促活動を行っている。
ラッキンの店舗はデリバリーに特化したスタイルで、中国全土に2163店舗を展開している。アプリ経由の注文から18分でコーヒーが届くのが同社の売りだ。一方、スターバックスの中国の店舗数は3600店で、顧客はゆったりとした空間で比較的高価なメニューを楽しんでいる。
ラッキンの急拡大を支えるのは巨額のマーケティング費用だ。上場目論見書によると、2018年のラッキンのオペレーションコストは3億6300万ドルだったが、その3分の1がディスカウント費用を含むマーケティング費用だった。
一方で、コーヒーやその他のメニューからあげた同社の年間売上は1億2500万ドルだった。つまり、ラッキンは販促費用を埋め合わす程度の売上しか得られていないのだ。